2011年08月05日 10:38 公開

妊娠中の喫煙で子供の行動障害リスクが上昇―英研究

女児よりも男児で高い傾向

 【ロンドン】英ハル・ヨーク医科大学のKate E. Pickett教授らは,妊娠中に喫煙していた母親の子供では,3歳までに異常に活発で注意力が欠けるなどの行動障害を発現するリスクが高まると、英医学誌「Journal of Epidemiology and Community Health」(2009; 64: 82-88)に発表した。男児は女児よりも行動障害リスクが高く,性差があることが示された。

1万4,000組の母子を解析

 今回の研究は,妊娠中の母親の喫煙行動と、出生した子供の多動や攻撃性など行動障害リスクを評価したもの。Pickett教授らは,2000~01年に出生した子供とその家族を調査した大規模研究「英国ミレニアムコホート研究(MCS)」の対象となった3歳児とその母親約1万4,000組のデータを解析した。

 妊娠中の1日当たりの喫煙量によって,母親を少量喫煙群(10本未満)と多量喫煙群(10本以上)に分け,これらの母親から生まれた3歳児における行動上の問題について「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)」を用いて評価。評価に際しては,問題行動と不注意・多動に焦点を当てて分析した。

 問題行動については,(1)子供の気質、(2)他の子供との殴り合いやいじめの頻度、(3)大人に対する理屈っぽい口答え―などを判断材料とした。一方,不注意・多動の行動については,情緒不安や落ち着きのなさの程度,注意がどの程度散漫になりやすいかなどに関する設問の回答に基づいて評価した。

多量喫煙群で問題行動リスクが2倍

 その結果,約10人中1人の母親が妊娠中も多量の喫煙を継続しており,12.5%が少量の喫煙を続けていると回答した。妊娠中に禁煙したと回答した母親は12.4%だった。

 妊娠中に喫煙していた母親から生まれた男児では,(1)出産時の母親の年齢、(2)母親の教育レベル、(3)社会経済的地位、(4)家族の安定度、(5)問題のある育児―などの要素で調整した後でも,非喫煙群の男児に比べて異常に活発で注意力が欠けるなど,行動障害が顕著に認められた。

 多量喫煙群の男児では,非喫煙群の男児に比べて問題行動のリスクが1.92倍。不注意・多動のリスクは、少量喫煙群で1.79倍、多量喫煙群で1.64倍だった。

 一方、女児では問題行動リスクが少量喫煙群、多量喫煙群ともに1.73倍だったが、妊娠中に禁煙した母親の女児では、非喫煙群の女児よりも問題行動や不注意・多動のリスクが低下した。

男児は化学物質の影響受けやすい

 禁煙群で非喫煙群を上回るリスク低下が見られた点についてPickett教授は、今回の研究結果は少ないサンプル数を検討したものとした上で、「禁煙に成功した母親は,自制心を持ち,おおらかな気質であることが考えられ,これが出生児に遺伝した可能性もある」と推測している。

 妊娠中の喫煙により,胎児の脳機能や構造上の発達が損なわれることは,これまでの動物実験で明らかにされている。

 女児よりも男児で行動障害リスクが高い理由として,同教授らは「男の胎児では,たばこなどの化学物質による影響を受けやすいと考えられる」とし,「喫煙によって、子供の発達や行動パターンに影響する遺伝要因と環境要因の複雑な相互作用が促進される可能性がある」と述べた。

Medical Tribune紙 2010年1月7日号 掲載

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