2011年08月16日 15:34 公開

事故による脳の後遺症、リハビリで社会復帰可能

 交通事故などで頭部を打撲すると、外傷性脳損傷を起こすことがある。外傷性脳損傷の後遺症とリハビリテーションについて、産業医科大学(福岡県)の蜂須賀研二教授(リハビリテーション医学)に聞いた。

20%に中等度以上の障害残る

 頭部に受けた外傷で脳が損傷する外傷性脳損傷は、年間人口10万人当たり27人の割合で発生している。外傷の原因は約50%が交通事故で最も多く、転落や転倒もある。外傷性脳損傷患者のうち13%が死亡、1%が植物状態で、20%に中等度から重度の脳機能障害が残る結果となっている。

 脳は、打撃を受けるとその部位とその反対側が損傷するが、強い外力を受けた場合は、脳内ばかりか周囲の神経や血管、組織が破裂したり、ねじれたりして、出血や腫れが生じる。脳損傷には、脳の特定の部位(局所)が損傷する「脳挫傷」や、脳細胞をつなぐ神経経路である軸索が広範囲に引き裂かれる「びまん性軸索損傷」がある。

 後遺症は、損傷が局所にとどまっているか広範囲にわたっているかで異なるが、高次脳機能障害の場合が多く、視力や聴力障害、手足のまひを伴うこともある。蜂須賀教授は「高次脳機能障害になると、人格形成やコミュニケーション、記憶、注意力など、社会生活を送る上で重要な脳の働きが悪くなる」と説明する。

 その結果、暴力を振るう、無気力になる、失語症になる、物の名前や操作手順、約束を覚えられない―などさまざまな症状が起こる。

できることを生かす

 高次脳機能障害の診断は、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)などによる画像検査、知能や記憶に関する検査、患者の行動観察などで総合的に行う。損傷部分自体は治せないが、リハビリや薬物療法で脳の障害を最小限にし、損傷を受けていない領域が失われた機能を補うことで、機能を部分的に回復する可能性はある。

 交通事故による脳外傷で軽度の記憶障害が残った29歳の男性は、計算、パズル、PQRST法(物語を読んだ後で質問を読み、間を置いて質問の答えを記述し、さらに間を置いてその記憶内容を確認する)による記憶訓練、日常生活でのメモやスケジュール表活用の習慣化など、記憶力の低下を補うリハビリを3カ月間行った。その結果、家業の農業に再従事できた。

 蜂須賀教授は「高次脳機能障害のリハビリでは、患者がその時点でできることを生かしていくことが、社会復帰の糸口になると思います」と話している。

2001年9月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)