2011年08月23日 13:37 公開

眠りながら暴力振るう「レム睡眠行動障害」

多くは抗てんかん薬で改善

 睡眠中に夢を見ながら暴力を振るうことがある「レム睡眠行動障害」という病気がある。この病気について、睡眠障害の専門外来を設けている久留米大学病院(福岡県)精神神経科の内村直尚・助教授に聞いた。

筋肉が覚醒状態に

 人は夢を見ているとき、「レム睡眠」と呼ばれる浅い眠りの状態となっている。この状態では通常、脳は覚醒状態に近く、眼球が激しく動いているのに対し、体の筋肉は緩んでいる。しかし、レム睡眠行動障害は、レム睡眠時に活動を停止しているはずの筋肉が覚醒状態になり、夢で行動する通りに体が動いてしまう。

 レム睡眠行動障害は、けんかをする、追い掛けられるなど、暴力的な夢を頻繁に見ることに始まり、数カ月から1年後には、睡眠中に大声を出し、暴力を振るうなどの症状が徐々に出てくる。会社の同僚とけんかする夢を見ていた患者は、タンスに激突するなどして、頭蓋(ずがい)骨や手の指を骨折したり、マンションのベランダから落下しそうになったりしたことがあった。

 内村助教授は「患者は、ほとんどが50歳以上の男性です。このため、睡眠中の夫の異常行動に気付いた妻が相談に来る場合も多いのです。症状は、午前3~5時ごろに出やすく、1晩に2~3回起こることもあります。症状が起きると、本人が負傷するだけでなく、就寝中の妻を殴ってけがをさせる危険性もあるため、早期に診断することが大切です」と話す。

 レム睡眠行動障害が疑われる場合は、病院に泊まって睡眠ポリグラフィー(脳波、眼球運動、あごの筋電図を測定)検査を受ける必要がある。レム睡眠時にあごの筋肉の動きが増加していれば、レム睡眠行動障害と診断される。

メラトニンも有効

 治療には、主にクロナゼパムという抗てんかん薬が使われる。服用を開始して1週間で、約8割の患者は異常行動がなくなるか、頻度が著しく減少する。

 内村助教授らは、同薬で症状が十分改善されない患者や、副作用(翌日の眠気やふらつき)が問題となる患者に対しては、不眠治療に使われることがあるホルモン薬メラトニンの投与を試みており、良好な結果が得られているという。

 レム睡眠行動障害は1986年に米国で報告され、1990年に国際学会で睡眠障害として認知された。国内の症例数は不明で、医学的データも少ないことから、同様の症状を訴えても夢遊病や寝ぼけ、酒の飲み過ぎ、せん妄と診断される可能性も高いようだ。

 同助教授は「特に、せん妄との鑑別が重要です。レム睡眠行動障害の場合は声を掛けるとすぐにわれに返るが、せん妄は意識障害のために目覚めることが困難で、翌朝そのことを尋ねても思い出せません」と説明している。

2000年7月取材(記事内容、取材対象の所属・肩書きは取材当時のもの)