2011年09月01日 17:13 公開

HIV感染で骨折リスク上昇か

閉経後女性の比較試験で明らかに

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した閉経後女性は骨密度の低下と骨組織の代謝回転が亢進する傾向にあり、非感染閉経後女性よりも骨折リスクが上昇する―。米コロンビア大学医療センターのMichael T. Yin氏らは、こうした研究結果を「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」(2010; 95: 620-629)に報告した。

サイトカイン産生亢進や抗レトロウイルス薬などが影響か

 抗レトロウイルス薬による強力な多剤併用療法(HAART)によってHIV感染者の延命が改善されたのと同時に、特に閉経後女性感染者の間で骨粗鬆症のケースが頻繁に報告されるようになった。

 そこでYin氏らは、米国に住むヒスパニックおよび黒人の閉経後女性187人(HIV感染者92人、非感染者95人)を対象に縦断調査を実施。二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による腰椎、大腿(だいたい)骨近位部全体、大腿骨頸部の骨密度、サイトカイン、骨代謝マーカー、カルシウム調整ホルモン、エストロゲンを測定し、HIV感染と骨組織異常の関連性を検討した。

 その結果、骨密度のTスコア※1が-1.0以下の割合は腰椎(HIV感染群78% vs. 非感染群64%)、大腿骨近位部(同45% vs. 29%)、大腿骨頸部(同64% vs. 46%)で、HIV感染群が非感染群を上回った。また、BMI(肥満指数)で補正したZスコア※2は、同様の項目でHIV感染群が非感染群を下回っていた。

 さらに、腫瘍壊死因子(TNF)αや骨吸収マーカーのI型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、I型コラーゲン架橋C-テロペプチド(CTX)の血清濃度はHIV感染群で著しく高くなっており、非感染群と比べエストロゲンが低下していることも認められた。

 Yin氏は「病理メカニズムはまだ明確でない」とした上で、HIV感染によるサイトカイン産生亢進、抗レトロウイルス薬の骨組織に対する直接的な副作用、HIV感染者に多い栄養不良やホルモン異常など、複数の要因を挙げている。

 エストロゲンは、骨吸収を促進するサイトカインの産生を抑制することが分かっている。HIV感染によるサイトカイン産生亢進と閉経によるエストロゲン低下という2つの作用が、HIV感染した閉経後女性における骨粗鬆症の発症率を高めているのかもしれない。

(MT Pro 2010年1月8日 掲載)

  • ※1Tスコア...若年成人平均値(YAM)に対する標準偏差。
  • ※2Zスコア...同じ年齢の健康な人の平均値に対する標準偏差。