2011年09月29日 16:14 公開

透析患者の海外旅行にどんな準備が必要か

医療環境の差の認識を

 慢性腎不全患者はこれまで、透析液の交換が必要なことから海外旅行が困難だった。しかし,現地情報の提供や透析の予約・手配支援を行う組織が登場し,海外への渡航者が増えている。全日空の五味秀穂部長(乗員健康管理部)は9月14日、東京都内で開かれた「第15回空の旅医学研究会」で,海外の医療機関では(1)透析時間が短い,(2)透析血流量が多い,(3)ベッド上で透析を施行しない施設もある―など,医療環境に日本との差があることへの認識を促した。また,診療時間内で打ち切ってしまう医療機関もあるため,渡航先では国内以上に水分・食事管理への注意が必要と指摘している。

航空会社や空港内施設は患者への考慮必要

 透析患者の海外ツアーや透析の予約サービスを提供しているJTBによると,血液透析だと年間利用数は200~250件に及ぶという。

 血液透析患者が渡航する場合,その患者に通常行われている透析方法などを記載した主治医作成の診療報告書(英文)を、事前に渡航先の医療機関へ提出する。また,渡航中に服用する便秘改善薬の処方も欠かせない。「海外での食事は日常とは異なるため一般的に便秘になりやすいが,透析患者に便秘が生じると注液と排液の流れに支障を来してしまう」と五味氏は指摘する。

 一方,日中の透析バッグ交換が必要な腹膜透析患者の場合,機内でのバッグ交換は可能なものの,交換に適した環境とは言えない。そのため、搭乗前後に空港でバッグ交換できるよう,事前に各空港施設会社に相談しておくことが望ましい。しかし,空港内施設でバッグ交換するには,実際にはさらなる環境改善が必要なようだ。海外出張の機会が多い腹膜透析患者からは、「はさみを手荷物として持ち込めないため,チェックイン前しか交換できない」などの声が寄せられているという。

 これを受けて五味氏は、航空会社や空港内施設は腹膜透析患者の便宜を図る必要があると話した。

透析装置を再利用する施設も

 渡航先で血液透析を受けた患者の感想として、「透析時間が短かった」「透析血流量が多かった」「穿刺(せんし)針が太かった」「透析を受けるとき,ベッド上ではなくいすに座っていた」などがあることを五味氏は紹介。「海外では,腎不全治療の最終手段は腎移植であって,透析はあくまで腎移植までのつなぎと考える。日本のように,長期に透析を行っていくという発想があまりない」(同氏)。また,東南アジアでは透析装置を再利用することもある。

 そこで,主治医作成の診療報告書に透析装置のシングルユースを希望する旨を含め,患者の希望を細かく記載することが望ましいという。

 また、海外の医療機関では,予約時間内に透析が終わっていなかったり,予約しておいた量の除水が完了していなくても,終了時間が来たらそこで打ち切ってしまったりすることがある。

 近年は,日本の医療機関並みに対応してくれる施設も見られるようになったが,まだ数は少なく、「海外の医療機関は日本ほどきめ細かくはない、という認識を持っていた方がよい」(五味氏)。そのため,食塩,水分,カリウムのコントロールは日常以上に注意を要すると指摘している。