2011年11月10日 18:00 公開

アルツハイマー病は感染する? 米国の動物実験で示唆

 アルツハイマー病も、狂牛病(牛海綿状脳症=BSE)などのプリオン病と同じく感染性があるかもしれない。そんなショッキングな報告が、米テキサス大学ヒューストン医学部のR Morales氏らにより、10月4日付の英医学誌「Molecular Psychiatry」(電子版)に報告された。マウスを用いた動物実験で、プリオン病と同様のメカニズムによる異常型蛋白質の蓄積が認められたという。

不明だったアミロイドβタンパク質の沈着開始メカニズム

 アルツハイマー病は、主に高齢者に多い認知症であり、その90%以上は遺伝と無関係な突発性であることが知られている。また、その原因なのか結果なのかは不明なものの、高次構造変化を起こしたアミロイドβタンパク質が脳内に多く蓄積することを特徴とする。しかし、この異常型タンパク質の蓄積がどのように始まるのか、これまで分かっていなかった。

 一方、BSEやクロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病も、異常なプリオンタンパク質が脳内に蓄積することで、進行性の脳障害を引き起こす。ただし、プリオン病の場合は、口から摂取された異常型プリオンタンパク質が、もともと脳にある正常なプリオンタンパク質を次々と異常型に変えていく、一種の感染症であることが知られている。

プリオン病と同じメカニズムで生じる沈着

 アルツハイマー病におけるアミロイドβタンパク質の蓄積も、プリオン病と同じメカニズムかもしれないと考えたMorales氏らは、アルツハイマー病患者の死後脳組織を、正常なマウスの脳に移植。すると、異常型アミロイドβタンパク質の蓄積が認められた。この結果は、アルツハイマー病患者の脳に蓄積していた異常型アミロイドβタンパク質が、正常なマウスの脳にある正常型アミロイドβ蛋白質の高次構造を変化させ、凝集、沈着を引き起こした可能性を示唆している。

 最近行われた別の研究結果によると、異常型アミロイドβタンパク質をおなかの中に注射しても、脳における異常型タンパク質の蓄積が認められたという(米医学誌「Science」2010; 330: 980-982)。

 Morales氏らは「アルツハイマー病に感染性があるのか、今後も慎重に検証していく必要がある」と述べている。ただ、感染性があったとしても、プリオン病のように経口感染する可能性は、現実的に皆無と言ってよいのではないかとも思うのだが。

(サイエンスライター 神無 久)

関連リンク(外部サイト)