2011年11月15日 17:00 公開

インプラント矯正って何?

 インプラント矯正とは何でしょうか?(30代男性)

矯正専用の小さなインプラントを埋め込み、これを固定源として矯正したい歯を動かします。

 矯正治療は、動かしたい歯に持続的な弱い力を加えることで歯が動く現象を利用しています。このとき、歯牙そのものは何も変化しませんが、歯根膜(歯根と歯槽骨をつなぎとめる膜)に骨を改造する作用を持つ細胞が集まり、歯を支える歯槽骨が改造されるため、結果として歯が動きます。

 通常、矯正治療で動かしたい特定の歯に力を加えようとするとき、その力の源は近隣の歯であるため、動かしたくない歯まで動いてしまうことがあります。これはちょうど、池の中で溺れている人を助けようと思って池の淵に立っている人が、池の中に引きずり込まれてしまうような状況に似ています。

 このようなことを避けるために、従来の矯正治療ではいろいろな工夫がなされてきました。例えば、口の外から固定源となる歯に力が加わっても動かないようにする装置(ヘッドギア)【図1】や、口の中に装着する同様な装置(ホールディングアーチ)【図2】などが使われてきました。


  

【図1(左)】ヘッドギア
【図2(右)】ホールティングアーチ

 インプラント矯正とは、固定源を「歯」の代わりに撤去を前提とした「矯正専用の小さなインプラント体」を歯肉に埋め込んで行う矯正治療です(図3、4、5)。失った歯を補う治療の"インプラント"と同じ名前ですが、目的も役割も異なります。

 また、矯正治療専用のインプラント体には、歯根膜がないため力をかけても動くことはありません。例えば、池の淵に杭を打ち、それを利用して溺れている人を助け上げるような治療となります。したがって、従来型の大がかりな装置が不要になり、場合によっては多くの歯を一度に動かせるため、治療期間の短縮も期待できます。

【図3】矯正治療用インプラント体

【図4】外科的侵襲は小さいと言われています

【図5】矯正用インプラント(右)のX線写真

 また、矯正治療専用のインプラント体を使うことで、従来のやり方では難しかった歯の動きも可能になりました(図6、7)。

  

【図6】インプラント矯正の治療例

  

【図7】従来では難しかったガミースマイルの改善も可能

 このように、インプラント矯正は広く矯正臨床で使われるようになりましたが、負担感が小さいとはいえ、外科的手術が必要なことと、インプラント体そのものが取れてしまいやすいという欠点もあります。

指導・監修

加治 初彦(かじ はつひこ)

加治 初彦(かじ はつひこ)
加治矯正⻭科医院 院⻑