2011年11月16日 10:21 公開

生ポリオワクチン接種は「ロシアンルーレット」

小児科医や患者会が国会議員に説明

 不活化ポリオワクチンの個人輸入接種や、経口生ポリオワクチンの接種見送りなどが社会現象化する中、患者会「ポリオの会」や不活化ワクチンの個人輸入接種を行う小児科医ら有志メンバーは11月15日、参議院議員会館で国会議員らを対象に「ポリオワクチンについて考える会」を開催。不活化ワクチン早期導入の重要性を説明した。発展途上国でポリオ撲滅運動にかかわり、日本でも臨床医として活動する小児科医の関場慶博氏(せきばクリニック院長、青森県小児科医会副会長、元国際ロータリー会長代理)は、生ワクチンの定期接種率が低下していることについて、「生ワクチンはロシアンルーレットに等しい。母親が自分の子供に向かって拳銃を撃つか」と不活化ワクチンの特例的な承認なしには現状の接種率低下打開は困難との見方を示した。また、民主党議員の1人からは「最も現実的な方策」も提示されている。

ポリオをなくすには国家レベルの取り組み必要

 関場氏は1988年から国際ロータリーの一員として発展途上国でのポリオワクチン接種活動など、世界のポリオ撲滅計画に参加してきた。

 同計画は、流行国でのポリオ患者発生を99%まで減少させる成果を挙げた一方、最近では、資金難に直面していた(WHO 2010年7月リリース)。しかし、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のバックアップを得てその危機を脱したほか、今年8月、日本政府もパキスタンでのポリオ撲滅計画に対し、約50億円の円借款による支援を行う決断をした(JICAプレスリリース)と紹介。「日本政府の対応を評価したい」と述べた。

 関場氏が毎年ワクチンキャンペーンのサポートを行っているインドでも、集団接種に政府が熱心に取り組んだ結果、今年1月の野生株の報告数は今のところ1件で、来年には患者ゼロが強く期待されているという。

 同氏は、ポリオをなくすためには「政府が子供を守るという熱意が必要」と国家レベルの取り組みが必要だとは強調する。

中国から感染者が来ている可能性も

 一方、日本国内のポリオワクチンを取り巻く状況は危機的で、不活化ワクチンの特例承認による早急な切り替えが必要と関場氏は主張している。

 また、ワクチン由来のポリオだけが約30年間発生し続けている現在の接種体制について「100万発の弾倉の中に5発の実弾を込めて、その拳銃をお母さんに渡して『さあ子供に向かって撃ちなさい』というのが、今の(日本における)生ワクチン接種。お母さんが自分の子供に向かって拳銃を撃つか。厚労大臣は早くて2013年3月から不活化ワクチンを始めるから、それまでロシアンルーレットで我慢しろと言っている。そういうことを考えてほしい」と批判。不活化ワクチンの特例承認なしには、接種率の回復は難しいとの見方を示した。

 特に最近、輸入症例によるポリオの発生が起きた中国の出来事は決して対岸の火事ではない。すでに、北京市内でも1例の感染例が報告されているともいわれているためだ(関連記事)。関場氏は「1例出れば、その周囲に100~200例の不顕性感染例がいると考えられる」との見解を示す。その上で「感染者がすでに日本に来て感染が拡大していることも十分あり得る。そうした中で日本人のポリオワクチン接種率が低下しているのは由々しき問題」と述べた。

「2段階方式の申請」で予定より半年早い承認目指す

 超党派の議員連盟「世界からポリオを無くす会」の事務局長を務める民主党の藤末健三氏(参議院議員)は「厚労省内部でも早期承認に向け、頑張っている」と理解を求めながら、通常の手続きの範囲内で可能と考えられる案を示した。もともとは千葉県立佐原病院小児科部長の松山剛氏の提案だという。

 提案では、不活化ワクチンの第1期接種(1~3回目)と4回目の追加接種時期をそれぞれ別に申請することとされている。これにより、第1期と第2期の接種間隔(1年)を待たずに不活化ワクチンの定期接種導入が可能で、従来のプロセスに比べ、半年以上早い導入が期待できるのではないかと藤末氏は説明。

 これに対し、「考える会」関係者からは、今起きている生ワクチン接種率の低下は言い換えれば「生ワクチン拒否だ」との意見も出た。そのため、承認期間を約1年に短縮したとしても「現在、生ワクチンの接種を見送っている人がその間に生ワクチンを受けるとは考えにくい。あくまで特例的な導入を行うべき」との見解が示された。

(編集部)

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