2011年11月18日 15:07 公開

中高年の「鉄欠乏性貧血」は注意が必要

重大疾患が隠れている可能性も

 体内の鉄が不足する「鉄欠乏性貧血」は、女性に多いことで知られているが、中高年になってから症状がある場合も注意が必要だ。順天堂大学医学部血液内科の小松則夫主任教授は「中高年以降になって鉄欠乏性貧血の症状が出た場合、悪性腫瘍などの重大な病気が背後にある可能性もあります」として、鉄欠乏による貧血の原因を突き止めることの重要性を訴えている。

ダイエットによって鉄不足の女性がさらに増加

 人間の体内には男性で4,000ミリグラム、女性で3,000ミリグラムの鉄が存在している。正常な人の場合は1日当たり、食事で1~1.5ミリグラムの鉄が吸収され、便や尿、皮膚から同等量の鉄が排出されており、体の中の鉄量はほとんど変動しない。

 鉄が不足する原因は、性別や年齢によって異なる。女性の場合、鉄不足になる大きな要因は月経で、1度につき20日分の鉄量に相当する約20ミリグラムの鉄を失っている。加えて、妊娠から出産、授乳の過程では約500ミリグラムの鉄が失われる。婦人科疾患が原因の場合は、子宮筋腫によって過多月経になり、貧血に至るケースが多い。また、近年はダイエットの影響で食事からの摂取量が減少し、女性の貧血人口はますます増加しているという。

 中高年期以降の貧血は特に注意が必要。この年代で貧血が生じたら、原因は消化管からの出血である可能性が高い。そのほかには痔疾(じしつ)、腎臓や膀胱などの尿路系からの出血も考えられる。小松教授は「中高年の貧血は、悪性腫瘍の1つの症状として出ている場合もあります。早期発見にもつながるので、治療とともに原因を追求することがとにかく重要です」として、貧血が起きた背景を明らかにする必要性を強調した。

勝手な自己判断は禁物

 鉄欠乏性貧血の症状は、貧血一般に起こるものと、特徴的なものに大別される。一般の症状としては、顔色が悪い、ちょっとした動作で息切れ、動悸(どうき)がする、頭痛、耳鳴りといったものがある。これに対して特有の症状は、手の爪がスプーンの皿状に変形する「スプーン爪」、食品として考えられない壁土や土鍋などを食べたがったり、氷を多食したりする「異食症」、食道の粘膜にヒダができて食物がつかえる「プラマービンソン症候群」の3つがある。

 治療は、原則的に経口の鉄剤を服用する。通常は2~3カ月で貧血状態は回復するが、貯蔵分の鉄を体内に蓄えるため、3カ月~半年程度は医師の指示に従って鉄剤を服用し続けることが必要だ。小松教授は「貧血の症状がなくなったからといって、決して自己判断で鉄剤の服用をやめないように」と注意を促している。

 日常生活では、偏食せず、鉄分の多いレバーや、赤身の肉あるいは魚などの動物性タンパク質を取ると良い。ただし、食事からの鉄分吸収率は約10%と低いため、貧血になった場合は鉄剤の服用が基本となる。また、手軽に取り入れられるサプリメントについて、小松教授は「医師が処方する鉄剤とサプリメントでは鉄の含有量が大きく異なるので、治療を目的とするならば医師が処方する鉄剤を服用した方が良いでしょう」としている。

 鉄欠乏性貧血は病気ではないが、症状が出たら体からのサインと受け止めて、いずれの場合も早めに対処したい。

(編集部)

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