2011年11月22日 12:01 公開

誤嚥性肺炎を防ぐ方法はありますか?

誤嚥性肺炎を防ぐ方法はありますか?

(男性 20代)

口腔ケアが最良の予防策だと考えられます。

 食べ物や水分、唾液、胃液などが誤って気管・気管支に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言い、誤嚥した物質により引き起こされる肺炎が誤嚥性肺炎です。

 要介護高齢者は、脳血管障害、認知症、パーキンソン病といった脳の疾患により介護が必要になることが多く、摂食・嚥下(せっしょく・えんげ)障害や正しく発音できない構音障害を合併している場合もあります。脳血管障害のはっきりした症状がなくても精密検査などで発見されるような小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)があると、嚥下障害が現れるため、誤嚥性肺炎を引き起こす危険があると言われています。

 また、高齢者の嘔吐や誤嚥を実際に確認できていなくても、誤嚥性肺炎がしばしば起きることがあります。これは、本人も自覚せず、介護者も気付かないうちに、口腔・咽頭内の唾液や食べ物などの残留物が少しずつ気管内に流れ込む現象で、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)と言われています。また、病気や加齢などにより口腔咽頭部に食べ物や水分が到達した時に生じる反射性の嚥下運動(嚥下反射)や気管内に侵入した異物を咳によって排除しようとする反射(咳反射)が低下しているために、口腔の細菌や唾液が誤って気管に入りやすくなり肺炎を引き起こします。

 日本人の死因の第4位が肺炎であり、肺炎の約70%は誤嚥性肺炎であると診断されています。肺炎の発症率は加齢とともに増加し、肺炎で死亡する人の94.4%は65歳以上の高齢者で、年々増加傾向にあります。また、肺炎のために入院を余儀なくされ、長期の安静臥床を続ける間に心身機能が低下して、長期間にわたる寝たきり生活(廃用症候群)が進行し、さまざまな合併症を引き起こした結果、要介護状態となる危険もはらんでいます。

さらに、高齢者の誤嚥性肺炎による入院期間は平均50日にも及び、その医療費は170万円にも達すると報告されています。このように誤嚥性肺炎は高齢者の罹病率や死亡率を上昇させるのみならず、社会経済学的に医療費や介護費用を増大させる大きな要因であると言えます。

誤嚥性肺炎の予防法には、下記の3項目が挙げられます。

  1. 嚥下機能や咳反射を高める
  2. 全身の免疫機能を高める
  3. 口腔を清潔に保ち、口腔内細菌の誤嚥量を減少させる

 上記のうち、要介護者の嚥下機能や咳反射を高めることや、免疫機能を含めた全身状態を良くしようとするのはなかなか難しいことです。しかし、口腔ケアにより「たとえ誤嚥しても肺炎を起こさないよう、口腔内の細菌数を日頃から少なくし、細菌叢(さいきんそう)を正常化し誤嚥性肺炎の起炎菌(感染症の原因となる細菌)を減少させておく」ことは、比較的容易です。このように考えていくと気道感染予防は口腔ケアが最大の予防策だと考えられます。

  高齢者における口腔ケア【図1、図2】は、単に口腔内を清潔にするだけでなく,死亡原因となる誤嚥性肺炎を未然に防ぐとともに、摂食機能の改善、脱水や低栄養状態の予防にかかわり、生活の質(QOL: Quality of Life)向上の観点からもきわめて重要です。

【図1】口腔ケア前の状態

【図2】口腔ケア後の状態