見世物にされた脳性麻痺者

2011年12月08日 15:00 公開

見世物にされた脳性麻痺者

逆さ首
逆さ首

 ここにかかげたのは江戸時代の『見聞雑録』という随筆の中に載っていた浮世絵である。この絵の人物は見世物小屋で、「逆さ首」と名づけられる出し物に出演させられていた。

 説明文によると、「信州の漁師の子で、名を勇吉といい、42歳。身長一尺五寸。歩行はできず、這いずり廻っていた」とある。首が後方へ反り、head controlが困難であったことが知られる。42歳まで長生きしていたのは、よほど内臓が丈夫だったからに違いない。

 上半身は弓なりに反り、手足にぎこちない不随意運動がみられる。身体障害者を扱ったことのあるドクターなら即座にアテトーゼタイプ(自分の意志に反する不随意運動の一種)の脳性麻痺であると診断できよう。なお身長一尺五寸とあるが、これは肩から臀部までをいっており、手足をのばせば実際にはもっと背は高かったであろう。江戸時代にアテトーゼ型四肢麻痺(athetotic quadriplegia)を描いた世界的にみてもきわめて貴重な浮世絵といわなければならない。

 当時は脳性麻痺だけでなく、水頭症、小人症、巨人症、フォコメリア(あざらし肢症、胎児に独特の奇形)など多くの障害をもった人たちが見世物小屋にさらし者にさせられた。

 ただ盲人だけは検校の位階をさずけられ、あんま、ハリ、灸などの職を得て保護された。これは徳川将軍家の血族の中に目の不自由な者がおり、そのためにこのような特権が与えられたといわれている。

愛知県心身障害者コロニー こばと学園名誉総長・篠田達明

図:逆さ首(『見聞雑録』より)

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