2011年12月12日 13:22 公開

ノロウイルスもついに「ワクチンで防げる病気」に?

ただし「血液型B型とAB型の人は除外」の理由とは

 ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎は、子供だけでなく大人も苦しむ"おなかの風邪"として、特に冬に流行する。しかし、このウイルス感染症もついに"ワクチンで防げる病気"の仲間入りを果たす日が近付いているようだ。12月8日付の米医学誌「New England Journal of Medicine」(2011; 365: 2178-2187)に、世界初となるノロウイルス(ノーウォークウイルス株)ワクチンの臨床試験の良好な成績が報告された。ただし、この臨床試験では除外基準に「血液型B型とAB型の人」が含まれている。その理由とは...。

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2回の接種で胃腸炎の発症・重症化が減少

 ノロウイルスワクチンは、"子宮頸(けい)がんワクチン"として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンなどと同じ「ウイルス様粒子」の技術を用いて作製された単価の経鼻ワクチン。ウイルス様粒子は、ウイルスの外殻(カプシド)を構成するタンパク質だけを再現した"空の粒子"で、ウイルスの遺伝情報を含まないため感染性はないが、ウイルス粒子と同等の抗原性を生じさせることができるため、安全性の高いワクチンの開発などに応用されている。

 今回の試験対象とされたのは18~50歳の健康な成人。50人がワクチン接種群、48例が偽薬群(マンニトール・ショ糖)に割り付けられた。接種間隔を21日間空け、2回のワクチン接種を実施。この間に、ノーウォークウイルス株への曝露(ばくろ)も行われた。2回の接種を完了したのはワクチン群47人、偽薬群43人だった。

 ワクチン群の70%でノロウイルスの抗体が確認された。試験を完遂した77人における感染性胃腸炎の発症率は、プラセボ群の69%に対してワクチン群で37%と、統計学的に有意な減少が認められた。このほか、ノーウォークウイルス株感染率と感染性胃腸炎の重症化スコアも、ワクチン群で有意に低かった。

 最も多く報告された接種後の症状は鼻詰まり、鼻水、くしゃみで、有害事象(副作用)の報告率は両群で同等だった。

感染率はO型で高くB型で低い

 なお、今回の臨床試験で定められた23もの除外基準の1つに「血液型B型またはAB型」がある。また、これに関連する導入基準の1つとして「唾液中にH1抗原が確認された人」が定められている。H1抗原は、O型の人でしか残らないH抗原の亜型の1つ。

 実は、2000年ごろから、ノーウォークウイルス株が特定の血液型の抗原をレセプター(ウイルスの結合部分)として感染することが分かってきているようだ。これまでO型の人のノーウォークウイルス株感染率が高い一方、B型の人では低いことが報告されており、血液型のようなかなり個体差のある宿主のレセプターを用いる感染様式は珍しいとの意見もある(参考:広島市衛生研究所「ストップ・ザ食中毒:カキにあたる人、あたらない人」 )。

 なお、ノーウォークウイルス株はO型の人が持つH抗原に吸着すること、H抗原が赤血球表面だけでなく、ウイルスの標的臓器である腸管のほか唾液中にも分泌される遺伝子多型があること、血液型抗原への結合力が強い株は感染力が強い可能性などが明らかにされているようだ(参考:国立感染症研究所ウイルス第二部 白土東子氏ら「ノロウイルスと血液型抗原」

(編集部)

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