2011年12月12日 15:40 公開

ホルモン避妊法で女性のHIV感染リスク上昇

アフリカ

 避妊のためのホルモン製剤には、1日1回の経口剤や長時間作用型の注射剤などがあり、世界中で1億4,000万人以上の女性が使用している。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染女性が1,600万人存在するサハラ砂漠以南のアフリカでも、ホルモン避妊法の使用率は高い。米ワシントン大学疫学のRenee Heffron氏らは、サハラ砂漠以南のアフリカで、約3,800組のカップルを対象にホルモン避妊法とHIV(HIV-1)感染リスクとの関係を調査した結果、ホルモン製剤を使用している女性では、自身のHIV感染リスクとパートナー男性へのウイルス伝播(でんぱ)リスクのいずれも上昇することが分かったと、英医学誌「Lancet Infectious Diseases」(電子版)に発表した。こうしたリスクは、注射剤の使用女性で特に高かったという。

パートナーへの伝播リスクは2倍

 ホルモン避妊法が女性のHIV感染リスクに影響を及ぼす可能性については、これまで複数の研究で検討されていたが、一貫した結果は得られていなかった。

 今回の研究は、ホルモン避妊法が女性のHIV-1感染リスクと男性パートナーへのウイルス伝播リスクに及ぼす影響を検討するために計画されたもの。アフリカの7カ国(ボツワナ、ケニヤ、ルワンダ、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ)における2件のHIV-1感染研究参加者の中から、カップルのいずれか一方がHIV-1に感染している異性愛カップル3,790組を登録した。そのうち、女性がHIV-1に感染していないカップルは1,314組だった。

 解析の結果、ホルモン避妊法の使用により、女性のHIV感染リスクは2倍になることが分かった。長時間作用型注射剤(主に酢酸メドロキシプロゲステロンのデポ剤;DMPA)と経口避妊薬のいずれの場合でもリスクは上昇したが、経口避妊薬に関しては統計学的に有意な上昇は認められなかった。

 さらに、試験登録時にHIV-1陽性で注射剤を使用していた女性では、ホルモン避妊法を使用していなかった女性と比べ男性パートナーへの伝播リスクが2倍だった。

ホルモン避妊法を制限するだけでは解決しない

 論文の著者の1人である同大学のJared M. Baeten氏は「今回の研究結果は、家族計画を立てたり、HIV予防プログラムを作ったりする上で、重要な示唆を含んでいる。特にHIV-1感染率の高い環境では、より重大だ」と説明している。

 一方、筆頭研究者のHeffron氏は、避妊法に関して「HIV-1に感染している女性や感染リスクの高い女性では、ホルモン避妊法を避けるか低用量ホルモンとコンドームによる二重保護の重要性を強調した推奨を早急に行う必要がある」と注意を喚起している。

 さらに、同氏は「ホルモンパッチやホルモンインプラントなどの他のホルモン避妊法、子宮内器具などの非ホルモン避妊法に関しても、HIV感染リスクとの関連について早急にデータを収集する必要がある。また、こうした低用量ホルモン薬や他の避妊法に対するアクセス改善と普及のための戦略を優先的に進めていくべきだ。避妊カウンセリングには、HIVのカウンセリングと検査を含めるべきだろう」と述べた。

 国際家族保健研究所臨床科学部門のCharles S. Morrison氏らは、同誌の論評(電子版)で「HIV感染率の高い地域でホルモン避妊注射剤を積極的に普及させる活動が、逆にHIVまん延に寄与している可能性があるというのは、痛ましいことだ。しかし、最も広く用いられているこの効果的な避妊法をサハラ砂漠以南のアフリカで制限することは、おそらく母体の死亡率と病気にかかる率の上昇、低出生体重児と孤児の増加という、同じくらい悲劇的な結果を招くだろう」と指摘。「今こそ、この問題に確固たる答えを出すときであり、関連機関がホルモン避妊法とHIV感染に関するより詳細な試験の実施を支援していくべきだ」と強調している。

(編集部)

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