2011年12月22日 13:49 公開

鳥インフルの公表前論文の改変を勧告―米国

 米国立衛生研究所(NIH)は12月20日、英科学誌「Nature」と米科学誌「Science」に投稿中の、高病原性鳥インフルエンザウイルス(A/H5N1)に関する研究論文2報の公表について、米バイオセキュリティー国家科学諮問委員会(NSABB)が結論を出したと発表した(同日リリース)。NSABBは新たに得られた知見の意義を認めながらも、論文著者および両誌の編集委員会に対し、鳥インフルエンザのヒトへの感染性を獲得するために必要とされる遺伝子変異の具体的な記述の削除などを求めているという。両誌の編集長は、研究者の権利の保護を訴えている。

「従来考えられていたよりも危険」

 2つの論文はそれぞれ、東京大学医科学研究所の河岡義裕氏らがNature誌に、オランダ・エラスムス大学のRon Fouchier氏らがScience誌に投稿。いずれもNIHによる資金助成が行われている。

 A/H5N1鳥インフルエンザは、現時点では人間への感染および人間同士の伝播はほとんど見られない。しかし、自然界でウイルスが変化し、ヒトへの感染力を持つことは多くの研究者や公衆衛生関係者の懸念するところ。NIHは、これらの論文で報告されている内容は公衆衛生上の利益をもたらす一方、悪用される可能性があるとして、NSABBに意見を求めたと説明している。

 NIHによると、これらの論文にはA/H5N1鳥インフルエンザの哺乳類への感染能獲得に関する実験内容が記されているという。また実験結果からは、いくつかの遺伝子変化によって、人間を含む哺乳(ほにゅう)類に感染する危険性が従来考えられていたよりも高いことも明らかになっているようだ。

Nature編集部「公表制限は無意味」

 NSABBは2つの論文の関係者らに対し、A/H5N1鳥インフルエンザの遺伝子改変の具体的な記述を論文から削除することのほか、改変個所に関する報告書の当局への提出や、実験施設の職員や一般市民におけるA/H5N1鳥インフルエンザからの防護策などについて詳しい説明を加えることなども勧告している。

 これに対し、Nature誌は公式サイトニュースで「未公表の論文は、すでに論文査読者を含め多くの研究者が目にしている。今、公表を制限することは無意味」と報じている。

 同誌のPhillip Campbell編集長は「今回のNSABBの勧告は異例」と、研究者らの活動に悪影響が及ぶと懸念を示す。またNSABBに対し、研究者らが論文から削除された部分の情報にアクセスできる仕組みづくりを求めた。Science誌の編集長も同様のコメントを発表している。

(編集部)

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