2012年01月23日 11:31 公開

足切断例の5年生存率42%、「フットケアの日」制定

日本フットケア学会などがプレスセミナー開催

 日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックは1月18日、東京都内で合同プレスセミナーを開き、足病変や足切断の実態や課題について講演を行った。糖尿病患者や人工透析患者が末梢動脈疾患などの足病変が原因で足を切断すると、5年間の生存率が42%との報告がある一方、認知度が低いことなどから放置されるケースも少なくないという。プレスセミナーでは、三者合同で取り組む足病変の予防や早期発見・早期治療の啓発を目的として、今年から毎年2月10日が「フットケアの日」に制定されたこともあらためて発表した。

視力障害による深爪も要因

 昨年12月に行われた、糖尿病患者および人工透析患者計400人を対象としたインターネット調査では、末梢動脈疾患の疑いが認められた人は197人(49.2%)いたにもかかわらず、末梢動脈疾患について「聞いたことも見たこともない」と回答した人が72.0%に上ったという。この調査結果を踏まえ、3人の医師が講演を行った。

 最初に登壇した東京都済生会中央病院糖尿病臨床研究センターの渥美義仁センター長は、糖尿病性足潰瘍(かいよう)・壊疽(えそ)について解説。「糖尿病の合併症である神経障害や血流障害のほか、血糖管理不良による易感染性(感染しやすくなること)、その他の環境要因という4つの条件がそろっている場合、靴擦れ、胼胝(べんち=たこ)、やけどなどをきっかけとして発症してしまうケースがある」と述べた。

 環境要因について同センター長は、糖尿病網膜症や白内障による視力障害を一例として挙げ、「(そのことにより)深爪をしたり、自宅内の段差などにぶつけて小さな外傷を負ったりする。また、"独居"や"高齢"も環境要因に数えられる」とし、「独り暮らしの高齢者では、足のセルフケアが困難な場合も多い」と指摘した。

 そのため、糖尿病の専門医としては診察時に患者の足も診ることが重要であるとしながらも、「1人当たり5~10分程度の診療時間では、患者全員の足を外来で診るのは非現実的」と話し、「人工透析患者などリスクの高い患者に的を絞り、足の診察を行う必要があるだろう」と訴えた。

"難治性"から"温存可能"な病気に

 続いて壇上に立った杏林大学形成外科・美容外科の大浦紀彦准教授は、形成外科・創傷外科の立場から、末梢動脈疾患および同疾患が進行した重症下肢虚血について講演した。大浦准教授によると、日本では患者数の疫学データがないため米国のデータから推計すると、国内に末梢動脈疾患患者は330万人、重症下肢虚血患者は18万人おり、重症下肢虚血の5年生存率はわずかに42%だという。

 また、10年ほど前までは両疾患では、血行再建せずに壊死を切除(デブリドマン)すると壊死が進行してしまうため、形成外科や整形外科では難治性と考えられていた。事実上、切断が唯一の選択肢だったようだ。

 ところが、血管内治療やバイパス術による血行再建が可能な施設が増えたことに加え、薬や湿潤環境を維持する素材などの登場もあり、脚を切断せずに温存できるようになったという。

 しかし、現実には治療可能な施設数はまだ不足している。大浦准教授「18万人の重症下肢虚血患者を救済するにはあまりにも少ない」と危機感を募らせ、今後はがん医療のような検診から治療・ターミナルケアなどのシステム化を見据えた取り組みが必要と訴えた。また、行政への働きかけやメディアを利用した啓発活動も不可欠としている。

米国に倣い大切断減少目指す

 最後に、小倉記念病院循環器内科の横井宏佳部長が、カテーテル治療の実際について講演した。同部長は「1996~2005年にかけて米国では患者の身体的負担の少ない血管内治療が大幅に増えており、逆に大切断は減少傾向にある。こうした米国の状況を日本にも取り入れたい」との意欲を示した。

 血管内治療の普及に欠かせない機器についても、「浅大腿動脈専用の新たな薬剤溶出性ステント(詰まった所を拡張する網目状の金属に血栓を溶かす薬剤が塗られたもの)が今年中にも承認されるといわれており、そうなれば革新的な治療が行えるようになるだろう」と期待を膨らませた。

 なお、今年から毎年2月10日に制定されることになった「フットケアの日」について、横井部長は「今年はポスター啓発を予定しているが、来年以降は、メディアにも働き掛け、さまざまなイベントを開催する予定。乳がんのピンクリボンのように知名度が上がるよう、努力したい」とコメントした。

(編集部)

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