2012年02月09日 10:08 公開

致死率ほぼ100%の狂犬病から生還した少女―米国

 米疾病対策センター(CDC)は2月3日付の週報(MMWR)で、カリフォルニア州郊外に住む8歳女児の狂犬病発症例が報告されたことを発表した。狂犬病はいったん発症するとほぼ100%が死亡するといわれているが、この女児、プレシャス・レイノルズちゃんは52日間の小児集中治療室入室、入院を経て生存退院を果たしている。プレシャスちゃんは海外への渡航歴がなく、狂犬病ワクチン未接種だった。米国内においてワクチン未接種で狂犬病発症からの生還が報告されたのは、これで3例目だという。米国内では、ABCニュースなどのメディアが大きく報道している。

受診から集中治療室入室まで7日要す

 CDCによると、狂犬病発症からの回復は、発症前に暴露後免疫(感染後のワクチン接種)が行われなければ、たとえ強力な支持療法を行ったとしてもかなりまれだという。プレシャスちゃんは当初、喉の痛み、嚥下(えんげ=のみ込むこと)困難、衰弱の状態が1週間続いたと訴え、かかりつけの小児科を受診。しかし、当時は日常生活に大きな支障を来していなかったという。

 その後、嚥下困難や水分の摂取困難が改善せず、地域の救急外来を3度受診。3度目の受診時には気分不良の状態で、脈拍は1分間に108回、血圧は収縮期(最高)が112ミリメートルHg、拡張期(最低)87ミリメートルHg、体温は35.9度で、頭部および腹部CT(コンピューター断層撮影装置)による目立った所見はなし、胸部CTでは一部に無気肺(肺に空気が入っていない状態)が見られたという。また、水分を飲み込む際の喉頭痙攣(けいれん)や呼吸窮迫状態が見られ、集中治療室に入室、人工呼吸管理を開始。この時点では2011年5月1日で、最初に小児科を受診した4月25日から7日が経過していた。

 集中治療室では、弛緩性麻痺(まひ)や意識レベルの低下を来したプレシャスちゃんに対し、抗生物質や抗てんかん薬による強力な治療が行われたが、この時点では細菌性肺炎あるいはマイコプラズマによる脳炎などが疑われたとされている。

 5月4日、カリフォルニア州の公衆衛生当局の要求で、エンテロウイルスやウエストナイルウイルスなどに関する検査が緊急実施されたが、一部を除き陰性との結果だった。その後に行われた検査で、狂犬病ウイルスが確認された。

 狂犬病の潜伏期間は1~2カ月とされるが、感染初期の生前診断は難しく、確定診断は死後の剖検によるのが一般的なようだ。そのため、流行国などではワクチンによる予防やウイルス保有動物への接触を避けることが勧められている(参考:国立感染症研究所、感染症の話 狂犬病)。

感染源は野良猫か

 プレシャスちゃんの診断後、麻酔薬のケタミンなどによる鎮静療法や、抗パーキンソン病薬のアマンタジンなどによる脳血管攣縮(れんしゅく)の予防療法が行われたが、抗狂犬病ガンマグロブリンや狂犬病ワクチンの投与は行われなかった。一方、プレシャスちゃんの唾液(だえき)に接触した可能性のある27人には、暴露後免疫が実施されたという。この中にはプレシャスちゃんの治療に当たった医療関係者のほか、学校のレスリングの授業を一緒に受けた生徒も含まれている。

 プレシャスちゃんは発症6カ月以内に地域外に旅行した経歴もなかったほか、狂犬病ワクチンの接種歴もなかった。通学する学校近くの野良猫数匹との接触歴が確認されたが、発症4~9週間以内の咬傷(こうしょう)歴はなかったという。調査の結果、1匹を除き、狂犬病ウイルス感染が疑われた猫はいなかったとしており、当局は野良猫だったのではないかと推定している。

 プレシャスちゃんは5月8日に自発的に頭を動かすなど、徐々に回復。6月22日に生存退院を果たした。今のところ、認知機能障害の徴候はなく、日常生活を送っているという。同報告では、米国におけるワクチン未接種下で狂犬病発症後の生存例は3例目で、強力な支持療法による生存例としては2例目と記されている。

 なお、この症例に関するニュースは昨年6月、米国では大きく報道されたようで、ABCニュースCBSのニュースでは本人の様子を見ることもできる。

(編集部)

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