2012年03月02日 10:08 公開

4月から義務化、「くすり教育」で中学生の理解深まるか

筑波大付属中でモデル授業

 2012年度の新学期を迎える4月から、中学生の授業で「くすり教育」が義務化される。新学習指導要領の完全施行を受けてのもので、3年生の保健体育で1~2時間を割き、医薬品の仕組みからセルフメディケーション(自身の健康を自身で手当てすること)、薬局と薬店の違いなどを教育する。この「くすり教育」を全国に先駆けて行っている筑波大学附属中学では、保健体育科の小山浩教諭が試行錯誤したオリジナルの授業を実施。わずかな授業時間でどこまで理解を深められるか疑問だが、生徒たちからは「なぜ水以外で飲んではいけないかが分かった」など、薬に対する意識が変わったとする声が聞かれた。

改正薬事法で教育が必要に

 文部科学省の新学習指導要領で「くすり教育」が追加された背景には、厚生労働省の改正薬事法施行がある。同法によってコンビニエンスストアなどで医薬品販売が可能になったが、便利になった半面、医薬品が手軽に入手できるようにもなった。そのため、義務教育の段階から医薬品に対する教育を行おうというのが、「くすり教育」の目的だ。

 すでに小学校、中学校、高校で各校の判断によって学習に組み込んでよいことになっており、中学校では2012年度、高校では2013年度から全面実施になる。

 筑波大学附属中学では、2008年度に保健体育の授業に組み込み、2009年度の休止を経て2010年度、2011年度と3年度にわたって3年生に「くすり教育」を行っている。まだ教科書がないため、授業は小山教諭が他校の教諭らと意見交換をしてつくりだしたオリジナルのものだ。

見て触れて楽しく学習

 授業は、生命の連続性とそれを阻む病気の説明に始まり、人類と病気の闘い、薬の歴史を紹介。薬の効き方や正しい飲み方、薬を購入するときの注意点などを説明する。

 薬の仕組みについては、腸溶錠を縦に割った模型や血中濃度の変化を示すツールを使い、実際のカプセル錠を湿らせて触る、生徒が持参した薬の分類や効能、注意書などを配布したプリントに記入するなど、単なる講義だけでなく、視覚や触覚を使って短時間でもざっと理解できるよう工夫されている。

 また、薬局と薬店の違いについては、小山教諭が学校付近の両店を撮影したり、生徒の最寄り駅の地図を配布し、両店の所在地に異なる色のシールを張らせたりなど、生徒が身近に感じることができるよう配慮した。

「お茶で薬を飲まなくなった」

 授業の中で流された映像で、「薬を飲むとき、水以外で飲んでも良いものは?」との質問があった。選択肢はジュース、牛乳、紅茶、スポーツドリンク、コーヒー。これらはすべて薬と飲んではいけないのだが、答えが表示されると生徒たちからは小さな驚きの声が上がった。実際、くすりの適正使用協議会が小中学生を対象に行った調査では、小学生の43%、中学生の42%が「お茶やコーラでの服用経験あり」と回答している。

 授業を受けたある女子生徒は「薬をお茶で飲むなど、飲み方をきちんと考えていなかったけど、最近病気になって薬を飲んだときには水で飲むように気を付けた。この辺は、授業で習ったことが生きたかなと感じる」とした。

 また、ある男子生徒は「薬の歴史や使い方など、ほかの授業では教わることができないので、新たな知識を得られた。きょうだいにも伝えていきたい。普段読まなかった注意書きを授業を受けたことで読むようになり、用法・用量を守るようになったり、保管場所などに気を付けるようになったりした」としており、薬に対する理解を多少は深められたようだ。

 小山教諭は「文科省から導入の方針が示されたとき戸惑った。しかし、早いうちに薬の教育は必要だろうと感じたし、生徒を通じて家族も薬のことを知る機会が増えればとの思いもあって、この授業は重要だと認識している」と述べた上で、「正直に言うと、1~2時間では足りない。総合教育や理科、家庭科などの時間と連携し、より深い教育ができればと考えている」との展望を語った。

(編集部)

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