2012年05月15日 12:00 公開

人前で話せないのは幼少期のトラウマのせい?

 人前で話そうとすると緊張して話せなくなります。足が震え、声も震え、手に大量の汗をかき、耳鳴りがします。 いつからそうなったかは分かりません。幼少期の何かがトラウマになっているんじゃないかと友人は言うのですが、本当でしょうか。

rika(女性 10代)

幼少期の経験がトラウマとなり、症状が出現するきっかけになることはあります。

 人前で話す時、緊張して不安やプレッシャーを感じることは誰にでもあることです。でも、このご質問のように体が反応したり、緊張が耐え難いほど強かったりする場合は病気かもしれません。 単に内気や恥ずかしがりという性格の問題ではなく、「社会不安障害」という病気の可能性があります。

 社会不安障害になるのは複数の要因が複雑に絡んでおり、原因はまだはっきりとは分かっていません。人の注目を浴びる中ですごく恥ずかしい思いをしたり、頭の中が真っ白になって固まってしまったりなどの失敗体験をきっかけとして発症することが多いのです。

 性格的には、完璧主義者や他人からの評価を気にし過ぎる人、いつも良い評価を得たい人、劣等感が強い人、引っ込み思案で人見知りの激しい人は社会不安障害になりやすいと考えられています。

 誰しも緊張すると交感神経が高まって、脈拍や呼吸が速くなったり、体が震えたり、汗をかいたりします。社会不安障害の人は、自律神経が不安定で過敏なため、このような症状が出やすいといわれています。

 さらに、脳の働きを調節している脳内ホルモンのドーパミンとセロトニンが関与していることも分かってきました。社会不安障害の人は、ドーパミンとセロトニンが上手に作用しないため、脳で不安や緊張を感じやすくなっていると考えられています。

 これらの要因が重なり、ある日突然発症してしまうのです。

 社会不安障害は、性格の問題と判断されたり、日常的な不安の一部として見過ごされたりする傾向がありますが、これは病気です。適切な治療を受ければ改善します。早めに心療内科や精神科を受診しましょう。

中野 里美(なかの さとみ)

1990年、東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。都立広尾病院、国立病院機構栃木病院などを経て、2007年から三菱UFJニコス株式会社診療所勤務。同社において初代統括産業医として、社員の健康管理を行っている。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント。