2012年05月16日 10:29 公開

セレンの過剰摂取に注意、糖尿病リスク上昇の恐れ

米報告

 英サリー大学のMargaret P. Rayman教授は、セレンの摂取が健康に及ぼす影響について総括した報告を英医学誌「Lancet」(2012; 379: 1256-1268)に発表した。同教授はこの中で、必須微量栄養素であるセレンが不足している人にとっては追加摂取が有益だが、食事からセレンを十分に摂取している人(大部分の米国民が該当)にはセレンサプリメントの摂取が有害となる可能性があり、2型糖尿病発症リスクを高める恐れがあるとしている。

"がん予防"でサプリ普及

 セレンは土壌や食材中に含まれる天然のミネラルで、健康維持に不可欠。セレンのあまり摂取しない、または血液中の濃度が低いことは、死亡リスクの上昇、免疫機能不全、認知機能低下と関連するとされてきた。

 一方、セレンを多く摂取する、または血液中の濃度が高いことは、男性の妊娠させる能力を向上させ、抗ウイルス作用があるほか、前立腺、肺、大腸、膀胱(ぼうこう)などのがんをある程度予防できるとされている。しかし、昨年発表の研究結果で、セレンの前立腺がん予防効果が否定された(関連記事)。

 また、これまでのエビデンス(科学的根拠となる研究結果)からは、セレンの欠乏量と中毒量の間の幅が狭いことや、高摂取が2型糖尿病リスクの増大などの有害な影響をもたらす可能性が示されている。

 セレン摂取量は各国間で大きく異なり、日本や米国、ベネズエラ、カナダなどでは多いが、欧州では比較的少ない。また、特に人口の約半数が栄養補助サプリメントを使用している米国では、サプリメントでセレンを摂取している。

 米国では、過去10年間にセレンサプリメントが広く使われるようになった。その主な理由は、がんなどの発症リスクがセレンによって軽減されると考えられているためだ。研究結果に基づいたさまざまな効能をうたって販売されているが、それらの研究結果を確認するために行われた臨床試験の結果にはばらつきがあるという。

血中濃度によって摂取の調整を

 今回の報告から、血液中のセレン濃度と遺伝的背景が異なる人たちの間では、研究結果が一致しないことが明らかになった。

 Rayman教授は「こうした不一致がみられるのは、多くの栄養素と同様に、セレンの追加摂取はセレンが不足している場合にのみ有益だという理由によって説明できる」と指摘。さらに「セレン追加の効用は、血中セレン濃度が低い人で最も強く表れる可能性が示されている。しかし、これまでに行われた大規模試験は、米国のように血中セレン濃度が正常な国で行われたもののため、血中セレン濃度が低い人たちを対象に検討していく必要がある」と付け加えている。

 同教授は、今回の研究結果について「重要な点は、セレン濃度が血漿1リットル中122マイクログラム以上の人はセレンサプリメントを摂取すべきではないということで、大部分の米国民が該当する(米国人男性の平均は134マイクログラム)。逆に、 122マイクログラム未満の人にはセレンサプリメントの摂取がさまざまな健康効果をもたらし、リスクもない。この場合には、死亡率が低下するとされる130~150マイクログラムに上げることで、利益が得られる可能性がある」と述べている。

(編集部)

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