2012年06月11日 14:00 公開

腰痛へのX線やCTなどの検査は有害、早期の場合―米解析

240億円の医療費削減効果も

 米コネチカット大学のShubha V. Srinivas氏らは、早期の腰痛に対するX(エックス)線やコンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)などの画像検査は経過を改善しないだけでなく、有害とする最新の分析結果を、6月4日付の米医学誌「Archives of Internal Medicine」(電子版)に発表した。全米医師連盟(NPA)は、症状が深刻な場合や進行する神経障害がある場合を除き、発症から6週間以内の腰痛には画像検査を行わないことを推奨しているが、今回の結果はこれを支持することとなった。さらに、早期腰痛の画像診断やめることによって、年間約3億ドル(約238億9,000万円)の医療費が削減されるとも報告している。

被ばくで将来のがんリスク上昇

 Srinivas氏らの調査によると、最近のデータでは腰痛患者の42%が発症1年以内に画像検査を行い、そのうち60%が初診日、80%は1カ月以内だった。その多くはX線だが、MRIやCTも増加しており、米国の高齢者または障害者向け公的医療保険「メディケア」がカバーするMRIは、1994~2005年に3倍以上増加している。

 5年以内に発表された、急性腰痛の経過に関する質の高い系統的レビューは1件あり、早期画像検査群と通常ケア群の間で痛みと機能の転帰に差は認められていない。

 一方、画像検査には、患者に特定の病名を付ける"ラベリング"のリスクがある。解剖学的な異常を診断することによって経過が改善するエビデンス(科学的根拠となる研究結果)はなく、ある研究では、画像所見を患者に伝えた場合、伝えなかった患者に比べて患健康意識が低下した。別の研究では、早期の画像検査を行った患者で3カ月後痛みと健康状態が悪化したという。

 また、画像検査は放射線の被ばくリスクをはらむ。2007年には220万件の腰部CT検査が実施されているが、これによって将来のがんが1,200例増えるという推算も報告されている。

手術リスク8倍、総医療費5倍

 さらに、Srinivas氏らは、画像検査を回避した場合の医療費削減効果を算定した。

 米国では腰痛を原因とした画像検査が年間380万2,800人に行われており、そのうち不要なX線検査をやめると年間1億4,000万ドル、不要なMRIとCTをやめると年間1億6,000万ドル、計約3億ドル(約238億9,000万円)が削減される計算となった。

 なお、この中には不要な手術の費用などは含まれていないが、腰痛発症から1カ月以内にMRI受けた患者では、受けなかった場合と比べて手術を受けるリスクが8倍、総医療費は5倍増加することなども報告されている。

(編集部)

  • 系統的レビュー......過去に行われた複数の研究を選別、吟味、要約し、それらが最も良い科学的根拠(EBM)となるかどうかを評価する分析方法。システマチックレビュー。

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