不妊のおはなし
2012年06月30日 12:33 公開

受精卵の着床がうまくいかない「着床不全」

原因の約9割は受精卵の染色体異常

 好条件の下で体外受精を行っても、妊娠に至らない状態が複数回続くなどすると、着床不全(障害)と見なされます。着床不全とは、受精した卵子が子宮内膜にうまく着床せずに妊娠に至らない状態をいいます。また、原因の約9割は、受精卵に染色体異常があることによるそうです。着床不全外来を設けているはらメディカルクリニック(東京都)の原利夫院長に話を聞きました。

早期流産が着床不全との考え方も

 着床不全は、早期の妊娠反応があったときや、体外受精で状態のよい胚(受精卵)を複数回移植しても妊娠が成立しない場合に考えられます。

体温計

 早期の妊娠反応とは、妊娠していたことが疑われるような自覚症状があることを意味します。例えば、おりものの状態が通常と異なっていた、生理が重かったというような変調があったり、基礎体温の高温期になるはずの期間に低体温の状態が続いたが他の妊娠反応が出なかったりするケースでは、受精卵が着床したものの、子宮の中で育たなかったと考えられます。

 体外受精においては、精子や卵子など全ての要素で異常がないにもかかわらず、妊娠が複数回にわたって成立しないと着床の部分で問題があると見なされます。

 着床不全の疑いがある場合、血液中のhCG(妊娠が成立すると分泌される物質)の値を測定して早期の妊娠の有無を調べます。hCGの値が100IU/Lを超えると妊娠継続率は64%以上となり、妊娠していることになります。hCGの値が出た時点で妊娠は発生しているものの、数値が25~50IU/Lと低い場合、妊娠継続率は35%以下となり、早期流産と判断されます。こうしたことより、早期の流産=着床不全という考え方もあるといいます。

治療が可能な原因は約1割

 着床不全の原因は、受精卵(胚)と子宮内膜それぞれの因子や、調和の取れた相互の作用などが相まっているため特定するのは簡単ではないのですが、「原因の約90%は、受精卵の染色体の異常によるもの」(原院長)だとか。

妊婦

 女性の加齢に伴う卵子の染色体異常の増加は対処する手だてがないため(「高齢での妊娠、卵子の老化が大きな障害」参照)、着床不全の大半を占めるこの原因を解消する方法はないということになります。

 一方で、残りの10%未満は、治療ができる明らかな原因があります。つまり、早期流産を繰り返す人のうちの約1割の人は、治療によって妊娠の可能性があるということです。

 治療が可能な原因の内訳は、炎症を起こすクラミジア感染症、血液が固まりやすくなることで弊害が生じる血液凝固異常や免疫異常、甲状腺機能異常、子宮筋腫などの子宮の異常、精神的なものなどがあります。検査などによって原因の病気が診断され、それぞれの病気に対応した薬物療法や外科的手術で治療を行います。

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