不妊のおはなし
2012年06月30日 12:38 公開

男性不妊、原因の多くは精巣機能に問題

精子の状態が悪い場合は専門機関で受診を

 世界保健機関(WHO)の不妊症の原因調査によると、約半数の割合で男性側に原因があるとされています。男性不妊の原因は、精巣機能に問題があるため健康な精子が作られなかったり、動きが悪くなったりする「造精機能障害」が多くを占めるといいます。男性不妊を専門に扱う恵比寿つじクリニック(東京都)の辻祐治院長は、精液所見が悪い場合は専門医や泌尿器科の診察を受けることを勧めています。

男性側の治療のみで自然妊娠が可能なケースも

 男性不妊の検査は、まず診断と治療の基本となる精液検査を行ます。精液所見は変動があるため、結果が非常に良好な場合を除いて2回以上の検査が必要とされています。精液検査の結果が良くない場合は、診察(問診、視診、触診)や超音波検査(エコー)、内分泌検査などを行います。超音波検査では精巣や精管の異常の有無を、内分泌検査では血液中のホルモン値を測定して病気を調べます。最初から不妊が分かっている人の場合は、初診でこれらの検査を行うこともあるといいます。

 検査を受ける医療機関について、辻院長は「(相手と一緒に)婦人科で精液検査をする方が多いのですが、精液所見が悪かった場合は男性不妊を扱う専門の医療機関や泌尿器科の受診をお勧めします」と話しています。婦人科では精液(精子)の検査のみ行われるので、もし機能に異常があっても発見されずに対応ができないためです。

 例として、婦人科の精液検査で精子の異常と診断されて体外受精を提案されたものの、実際は精子の通り道である精路が詰まっていて精子が出ない「閉塞性無精子症」だったケースがあります。同クリニックではこうした場合、精路をつなぎ直す精路再建の手術か、精巣内の精子を採取して顕微授精をする方法を選択します。

 女性側の年齢や状態にもよりますが、男性の精子の異常が何に起因しているのか判明すれば、体外受精や顕微授精の段階に進む前に、男性側が治療するだけで自然妊娠が可能となるチャンスがあるということです。

精液所見の改善が期待できる「精索静脈瘤」の治療

 男性不妊の因子に多い造精機能障害のうち、精液中の精子の数が少ない「乏精子症」、精子の動きが悪い「精子無力症」、精液中に精子がない「無精子症」が男性不妊の代表的な病気として挙げられます。また、精巣(睾丸=こうがん=)に血流が逆流して静脈がこぶ状に膨らむ「精索静脈瘤(りゅう)」は不妊に悩む男性の約40%にみられ、精巣の機能を悪化させると考えられています。この精索静脈瘤を治療することで、精液所見の改善と、乏精子症や精子無力症などの症状への効果が期待されます。

 治療には、血流が逆流しないようにする方法として、静脈を縛る手術と、静脈に栓をする方法があります。静脈を縛る手術では、顕微鏡を用いて精巣に近い静脈を縛る「顕微鏡下の精索静脈低位結紮(けっさつ)術」や、腹部を切開して静脈を縛る「精索静脈高位結紮術」などがあります。

 精子の状態を良好に保つためには、「禁煙する」「頻繁に射精する」「精巣を温めない」といったことを日常生活で気を付けるとよいそうです。特に射精を頻繁にすることについては、「妊娠のしやすさには精子の動きと形の影響が大きく、数はそれほど必要ありません。頻繁に射精したからといって精子の数が減るわけではなく、新しく出てくる新鮮な精子の方が、中にたまっていた古い精子より妊娠率は高いのです」(同院長)とのこと。

 また、女性に比べると男性は機能低下が緩やかとはいえ、年齢とともに造精機能は落ちていきます。造精機能は非常に個人差が大きいが、中高年で子供をつくりたい場合は、まずは精液検査を受けることが勧められます。

 « 1 2 3 4 5 6 7 8