2012年07月27日 14:45 公開

世界でたった1人の"エイズ完治者" 治療薬開発の基金設立へ

第19回国際エイズ学会で記者発表

エイズ完治者Brownさん<br>
Brownさんサイトより
エイズ完治者Brownさん
Brownさんサイトより

 2009年に米医学誌「New England Journal of Medicine」(2009; 360: 692-698)で、世界で最初のエイズ治癒例が報告された。現在も"唯一のエイズ完治者"とされる米国人のTimothy Ray Brownさんが7月24日、第19回国際エイズ学会(7月22~27日、米ワシントン)で記者会見を開き、エイズの治療薬開発に向けた基金を設立することを発表した。英米の複数のメディアが報じている。

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併発した白血病も克服

 Brownさんの個人サイトによると、ドイツ・ベルリンに留学中の1995年、エイズウイルス(HIV)検査で陽性と判明した。「当時のエイズ患者の大半がそうであったように、私自身も恐怖に襲われた」と振り返っている。しかし、ドイツの充実した医療保険制度により世界でも有数の最先端治療を受けられた上、抗HIV薬の副作用に耐える力にも恵まれており、その後11年ほどは平穏無事な生活が送れたという。

 ところが、やがて進行性疲労に襲われた末、がん専門医を紹介された。2007年、骨髄生検の結果、急性骨髄性白血病と診断。シャリテ大学病院に入院し、がん専門医のGero Huetter氏により標準的化学療法が開始された。一時は寛解して退院もしたBrownさんだったが、白血病が再発した。

 主治医だったHuetter氏が造血幹細胞移植を行った結果、HIVが消失。この時点で抗HIV薬の投与も中止したという。ベルリンで移植を受けたことから、メディアはBrownさんを「The Berlin Patient」と名付けた。翌2008年には白血病の再発が認められたが、同じドナーの造血幹細胞を移植。以降、Brownさんは白血病もエイズも再発していない。

「私は完治した」でなく「われわれは完治した」と言うために

 英米の複数メディアの報道によると、7月24日に国際エイズ学会で記者会見を開いたBrownさんは、エイズの治療薬開発に向けた基金の設立を発表した。その理由として、「素晴らしい能力を持ちながら資金不足に陥っている数多くの研究者がおり、私はそれを変えたい。世の中には、エイズ治療薬の開発を目指すたくさんの研究者たちがいる」と語った。

 Brownさんは自身のサイトをこう結んでいる。「私の夢は、人々の前で『私はエイズが完治した』と自慢する人間になることではない。『われわれは完治した』と言える人間になることだ」

(編集部)

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