2012年08月21日 09:42 公開

急増する加齢性難聴、最初は高音が聞こえにくくなる

精神状態にも悪影響

 高齢者の加齢性難聴が急増している。耳の聞こえの悪さを年のせいにして放置していると、他の耳の病気を見逃したり、聴覚情報が少なくて脳の老化を進めたりする危険性もあるという。注意点と対応策について、慶応義塾大学医学部(東京都)耳鼻咽喉科の小川郁教授に聞いた。

60歳代で40%に

 加齢性難聴は年とともに聞こえが悪くなる老化現象。30歳代に始まるが、日常会話が聞こえにくいなど支障を来すケースは60歳代で約40%、70歳代では約60%、80歳代になると90%近くになるといわれる。

 「音の伝わる経路のどこに老化が起きても聴覚は衰えてきますが、特に音を感じるセンサーの役割をしている内耳の蝸牛(かぎゅう)の老化が大きく影響します」(小川教授)

 蝸牛の内部には有毛細胞という感覚細胞が多く並んでいて、老化とともにその細胞の働きが低下したり消失したりするために聞こえが悪くなる。

 「最初はキーンといった高音が聞こえづらくなり、徐々に進行して日常会話が聞き取りにくくなります」(小川教授)。さらにひどくなると、耳元に近づいて大声で話してもらわないと聞こえなくなるという。

早期に補聴器利用を

 こうした聞こえの悪さは、精神状態にも悪い影響を与える。

 「聴覚情報が少ないと、うつ病や認知症を併発する危険性があります。また難聴は耳の病気に見られる最も多い症状で、滲出(しんしゅつ)性中耳炎など他の耳の病気が隠れているケースもあります。聞こえの悪さを自覚したときは最寄りの耳鼻咽喉科を受診すべきです」(小川教授)

 加齢性難聴と診断されても、その程度と生活習慣によって対応は異なる。老化は活性酸素による細胞の酸化が促進因子の一つと考えられているので、軽い場合はビタミンCやEなどの抗酸化剤で進行を予防できる可能性もある。ただ、老化による組織の変性を元に戻すのは難しいので、日常生活に支障を来す場合は補聴器で聴力を補うのが第一という。

 補聴器は医師の処方に基づいて作るのが基本。自分の難聴の程度に正確に合わせたものを作るとともに、慣れることも必要だ。

 「補聴器を使いこなすには、老眼鏡と違って根気よく調整して聞く練習を重ねることが大切です。その意味では、早期から補聴器を利用した方が効果的です」と、小川教授はアドバイスしている。

(編集部)

2010年3月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)