2012年08月24日 15:23 公開

ストレスに強い子供の生み方、妊娠中のコリン摂取が鍵

米研究

 ストレスに対する耐性が低いと、それに応答してストレスホルモン「コルチゾール」が大量に分泌される。その結果、将来的に代謝系や心臓血管系のストレスに関連した病気や精神疾患などにかかるリスクが高まることが知られている。では、どうしたらストレスに強い体質になるのか。米コーネル大学栄養科学・遺伝子学のXinyin Jiang氏らは、生まれながらにしてストレスに強い体質を獲得できる可能性を、米医学誌「Journal of the Federation of American Societies for Experimental Biology」(2012; 26: 3563)に発表した。その鍵は、母親が妊娠中に摂取する栄養素、コリンにあるという。

ストレスホルモンが33%低下

 Jiang氏らは妊婦24人を、妊娠後期(28~40週)の3カ月間、肉や卵に多く含まれるコリンを通常の推奨量(1日当たり480ミリグラム)を摂取させたグループと、その約2倍の量(同930ミリグラム)を摂取させたグループに、半数ずつランダムに振り分けた。コリンの摂取量は食事からを1日当たり380ミリグラムとし、不足分をサプリメント(栄養補助食品)で補った。

 出産後の胎盤や臍帯(さいたい=へその緒)の血液に含まれるコルチゾールの量、コルチゾールの産生を制御する遺伝子の発現量、さらには遺伝子のDNAメチル化※1の程度を調べた結果、倍量摂取グループでは、コルチゾール産生制御遺伝子などのDNAメチル化が進んで遺伝子の発現量が低下し、最終的にコルチゾールの産生量が33%低下することが分かった。なお、コリンは体内で使われるメチル基という分子の供給源としての働きを持つ。

 DNAのメチル化は、後天的な遺伝子変異であるエピジェネティック※2変異の中でも安定で、生涯を通して変化しにくいと考えられている。そのため、DNAのメチル化によってストレスホルモンを産生しにくい体質で生まれた子供は、成長してもその体質が維持される可能性が高いというわけだ。

 これまで、出産前のサプリメントとしてコリンが推奨されることはなかったことから、Jiang氏らは「コリンの摂取は、ストレスに強い子供をつくる可能性がある方法の一つ」としつつ、その長期的な影響も含め、さらなる研究の継続が必要とコメントしている。

(サイエンスライター・神無 久)

  • DNAメチル化......DNA配列の一部分がメチル基という分子にくっつくこと。エピジェネティクスの作用メカニズムの一つ。メチル化されると、遺伝子の発現が制御される。
  • エピジェネティックス......DNA配列の変化に関係なく遺伝子の発現を促したり抑えたりする仕組み。DNA配列が同じ一卵性双生児が、年齢を重ねるにつれて見た目や性格が異なってくることにも関与しているとされる。

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