2012年09月21日 09:52 公開

コーヒーは胃潰瘍や胃食道逆流症のリスクと無関係

 東京大学病院消化器内科の山道信毅氏が9月13日、東京都内で開かれた第16回コーヒーサイエンスセミナー(主催:全日本コーヒー協会)で、約1万人の健康な成人を対象にコーヒー摂取と胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃食道逆流症(GERD),非びらん性胃食道逆流症の関連を検討した結果,コーヒーはこれらの四大上部消化管疾患の発症とは関連しないと,報告した。コーヒーは胃酸分泌を促進するため,消化管疾患発症との関連が指摘されてきたが,今回の解析では明確に否定された。

コーヒー摂取量は1日1~2杯が最多

 近年,コーヒー摂取によるがんや心不全などの発症リスクの低下が報告されているが(関連記事1関連記事2),胃潰瘍などの消化管疾患との関連については一定の見解は得られておらず,新しい病気であるGERDや非びらん性胃食道逆流症については解析の数自体が非常に少ない。

 そこで山道氏らは,亀田総合病院幕張クリニック(千葉県)の人間ドックを受診した健康な成人9,517人のうち,胃の手術を受けたことがある人,制酸薬を内服している人,ピロリ菌を除菌した人を除く20~87歳の8,013人(男性4,670人,女性3,343人)を対象に,コーヒー摂取と四大上部消化管疾患発症の関連を検討した。

 内視鏡検査から胃潰瘍は172人,十二指腸潰瘍は282人,GERDは994人に,内視鏡所見を伴わない胸焼けまたは胃酸逆流の非びらん性胃食道逆流症は1,118人にそれぞれ認められた。1日のコーヒー摂取量については,1杯未満は2,473人,1~2杯は2,978人,3杯以上は2,562人だったという。

消化性潰瘍の最大のリスクはピロリ菌陽性

 検討の結果,胃潰瘍、十二指腸潰瘍、GERD、非びらん性胃食道逆流症の各リスクとコーヒー摂取との間に関連は認められなかった。なお、胃潰瘍と十二指腸潰瘍はピロリ菌陽性が大きく関与しており(それぞれ6.21倍、17.48倍)、逆にGERDはピロリ菌陽性でリスクが65%減少していた。

 すでに報告された胃潰瘍とコーヒー摂取との関連についての系統的レビュー※1とメタ解析※2では,両者は関連するとした報告がある一方で,否定的なものもある。

 そこで山道氏らは,既報の研究に今回の結果を加えてメタ解析を行ったところ,胃潰瘍および十二指腸潰のいずれも、コーヒー摂取との関連は認められなかった。

 同氏は「コーヒー摂取が胃酸分泌を促進するのは明らか。しかし、摂取による効果もあり,総合的に見てコーヒー摂取は消化管疾患を発症させないとの結論は価値があると考えている」と述べた。

 わが国は,米国,ブラジル,ドイツに次いで世界で4番目にコーヒー消費量が多く,長期にわたる摂取の影響も気になるところ。今後の研究では,摂取量別による消化管疾患発症の推移などを検討していくという。

(編集部)

  • ※1系統的レビュー......過去に行われた複数の研究を選別、吟味、要約し、それらが最も良い科学的根拠(EBM)となるかどうかを評価する分析方法。システマチックレビュー。
  • ※2メタ解析......過去に行われた複数の研究結果を合わせて解析し、より信頼性の高い結果を導く分析方法。メタアナリシス。

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