2012年09月28日 09:52 公開

高齢での子作り、男性も気を付けるべき? アイスランド研究

子供の発達障害が増える可能性

 子作りに年齢制限があるのは女性だけ、と思っている男性は多いだろうが、実はそう安穏と構えていられないかもしれない。アイスランドの78家族を対象に行われた史上最大規模のゲノム解析研究の結果、高齢の父親から生まれた子供ほど、多くの突然変異を父親の精子から受け継ぐことが分かった。突然変異が原因で、高齢の父親から生まれた子供には、自閉症や総合失調症、失読症といった病気が多くなる可能性があるという。詳細は、英科学誌「Nature」(2012; 488: 471-475)に掲載されている。

父親の加齢と共に突然変異が増加

 アイスランドは、国外からの人口流入が少なかったため国民の遺伝的背景が比較的均質で、また9世紀頃の建国当時からの家系図が多く現存しているという特徴を持つことから、ゲノム情報を考慮した疫学研究(ゲノム疫学研究)には最適の環境と考えられている。首都レイキャビックを拠点とするバイオ企業、デコード・ジェネティクス社は、全人口の87%以上、約28万人のゲノム情報を管理、利用する環境を整備している。

 デコード社の最高経営責任者Kári Stefánsson氏が率いる研究グループは、アイスランドに住む父、母、子の3人1組、計78組の全ゲノム解析を行い、両親(の体細胞)にはなく、子供(の体細胞)だけに存在する新生突然変異を調べた。これらの突然変異は、父親からの精子か、母親からの卵子に由来するか、もしくは受精後に新たに発生したかのいずれかの可能性に分けられる。

 その結果、子供のゲノムには平均60個の新生突然変異があることが分かったのだが、特徴的だったのは、その数が父親の年齢に比例していたという点だ。20歳の父親から生まれた子供には、平均25個の突然変異しかなかったのに対し、40歳の父親から生まれた子供は、平均65個の突然変異を持っていたという。つまり、父親の年齢が1歳上がるごとに、子供に伝わる新生突然変異の数が平均2個ずつ増えたことになるのだ。一方で、母親由来の新生突然変異は母親の年齢によらずほぼ一定で、15個前後だった。

 この原因は明らかだという。なぜなら、母親由来の卵細胞は、母親自身がまだ生まれる前の短期間に、一生分の卵子を生み出すための細胞分裂を終了しているのに対し、父親由来の精細胞の分裂は、父親が生殖可能な期間中、無限に続くため、その間に変異を蓄積しやすいからだ。

人類全体にも影響か

 ヒトの場合、突然変異の約10%は有害とされていることから、子供は平均6個の有害な突然変異を、主に父親から受け継ぐ可能性が示されたことになる。今回のStefánsson氏らの研究では、父親の加齢と共に、より有害な突然変異が子供に受け継がれるという証拠は得られていないが、有害な突然変異は子供にどのような影響を与えるのだろうか。

 同誌の付随論評(2012; 488: 467-468)によると、自閉症や統合失調症など子供の発達障害、精神疾患の多くは父親の年齢と比例して多くなることが知られており、父親に由来する有害な突然変異が、子供の発達障害の原因となっている可能性は大いにあるという。他の臓器よりも多くの遺伝子が活性化している脳では、数少ない遺伝子の突然変異でもその影響を受けやすいからだ。

 さらには、近年の自閉症児の増加も、父親の高齢化と関係があるかもしれないという。高齢で父親になるということは、自身の子供一人に影響するばかりでなく、人類という集団レベルにも影響を及ぼす可能性がある。そう考えると、男性でも高齢での子作りには慎重にならざるを得ないのかもしれない。

(サイエンスライター・神無 久)

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