2012年12月05日 11:47 公開

女子中高生の12%が経験、思春期の自傷行為

背景にいじめなど人間不信

 刃物などで故意に自分の腕を傷つける自傷行為は、中高生など若者の間で広がっている可能性がある。女子中高生の12%が経験しているという報告もあるようだ。人目を忍んで行われるため家族も気付きにくく、常習化すると新たな痛みを求めて、行為が重度化する恐れがある。

経験者の6割が10回以上

 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所(東京都)自殺予防総合対策センターの松本俊彦副センター長によると、中高生男子では7.5%、女子では12.1%が刃物で自分の体をわざと切り、さらに、その約60%が10回以上経験しているという報告がある。学校カウンセラーや、養護教諭が最初に気付くことがあるが、ほんの一部だ。

 傷の付け方は、右利きなら左の前腕をカッターやかみそりなどで切るケースが多い。習慣的な自傷行為者では、行為直後にβ(ベータ)エンドルフィンなど、いわゆる脳内モルヒネの血中濃度が上昇しているという報告もある。βエンドルフィンは、痛みを感じさせなくする働きや高揚感をもたらすといわれる。

 自傷行為が習慣化する原因として、虐待やいじめの被害、周囲の無理解によって生じた人間不信などが考えられている。

 「激しい怒りや不安、緊張、気分の落ち込みなど、耐え難い心の痛みを緩和するために自傷行為に及ぶのです」と松本副センター長。

認知行動療法が中心

 自傷行為は繰り返しているうちに慣れてきて、より頻繁により深く傷つけるようになる。自傷は自殺を意図した行為ではないが、長期的に見るとその危険性は高まる。英国の調査で、10歳代で1回でも自傷行為の経験があると、ない場合に比べて10年後に自殺する確率が数百倍高いという結果が出ている。

 治療では、精神療法の一つである認知行動療法が中心になる。情動を抑えるのに薬が補助的に使われることもあるが、薬物依存にならないように医師の指示に従って服用することが大切だ。

 「自傷行為そのものより、誰にも助けを求めず、一時しのぎに自分を傷つけることが問題。頭ごなしに叱るなどせずに、よく話を聞いて、背後にある苦痛を解決するための支援が必要です」と、松本副センター長は大人たちの理解を呼び掛けている。地域の保健所や精神保健福祉センターなどに相談して、家族がサポートを受ける方法もあるという。

(編集部)

2011年2月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

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