西城秀樹さんインタビュー(脳梗塞との闘い)(2)

2013年01月21日 15:46 公開

西城秀樹さんインタビュー(脳梗塞との闘い)(2)

第2回:「変化」そして「今できること」

――西城さんは、頑張り続けて走り続けてきた方というイメージがありますが...。

 若い頃、100やれって言われたら120やってきました。病気になって、最初は「前に戻りたい」と思うじゃないですか。何でできないんだという、いら立ちもリンクしてきますし。でも、それじゃダメなんです。かっこよく見せたくたって、もう、そうじゃないですから。

 無理してもそれは"崩れちゃう無理"なんじゃないか、それは不本意だな、どうしたらいいんだろうと思ったら、まず、「一患者になること」がスタートだと気づいたんです。「自分のありのままを見てもらおう、その頑張っている姿が美しいだろう」と思いました。「西城秀樹」でいることが崩れちゃうような無理をして疲れてしまう原因だから、まず「西城秀樹」というキャラクターを脱ごう、脱いで一人間に戻ったところから始めないと、僕はもうこの先は闘えないという気持ちになったんです。

 病気になって、それじゃいけない、もっと自然体じゃなきゃいけないと気づいて、だから外出時やリハビリ時に(変装用の)マスクもしないし、なるべくそのままで、頑張っているんだなと見てもらった方がいいし、周りの人たちに励みにしてもらえると自分の励みにもなるんですよね。これは再発後に変わった気持ちです。

――100と言われて120で走ってきた頃の自分については?

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 それはそれでよかったと思います。だから否定はしません。そういう時代があってもいいんじゃないかと。でも、70~75%くらいの力配分でないと自分がうまくやっていけないこととか、コップに目一杯入れたら持ちにくい水が7~8割なら運びやすいし飲みやすいってことに、病気をしてから初めて気づきました。本当は病気をせずに気づけばよかったけれど...。

 もしかしたら、そういう余裕がある方が70%の力でも200%にできるんじゃないか、100%だと目いっぱいギリギリで余裕がないから、それ以上は生まれてこないのかもしれないと思うようになりました。

 そうすると、感動することも変わってきます。例えば、竹林を見て「いい竹だ、生き生きしているな」と、素直に今感じることを表したくなってくるんです。以前は竹林なんて見向きもしなかったんですが(笑)。

 僕はもう、どん底まで行ったんですよ。病気をして悩んでどん底まで行って、立ち上がらなくてはいけないなと思った時にやっぱりゼロにならなきゃいけないと、いつまでも「西城秀樹」って思っていたらダメなんだと、もうそれでは生きる価値がないなと思ったら、とても楽になりました。

――それでもスーパースターというイメージはありますよね。

 そう思っていただいているのはとてもうれしいし、ありがたいんですが、僕の中ではもうスーパースターではないんです。病気をして以来、人間性などの内面が問われ、大事なのは感謝の気持ちだと心底思えるようになったから、人に頭下げることも素直になることも恥ずかしくないと感じて。そういう気持ちを持たなければいけないと、自分を戒めているんです。病気になった"裸の自分"を見られて、肩に力入っていたのが直ったんですよ。

 そうか、力抜いたらこんなに楽なんだって。楽になったら、同時に「今できること」が見えてきたんです。

――違う分野のお仕事も増えましたか?

 医療関係のトークショーとか、講演が多くなりました。ありがたいですね。講演などでいつも話すのは、「10のことを頑張れ」と言われてもやらない人がほとんどでしょう? でも、1つはできるはずなので、まずそこから始めましょうって。1つ始められたら2つ目、次は3つ目まで増やそうよ。あとはそれぞれ自分に任せるよって。押し付けじゃないのが一番いいかなと思っています。

 「やっています、やっています、リハビリやっています、ストレッチもやっています」という人に限って、実際はやってなかったりするんですよ。(笑)だから、自分に厳しくやっていくしかないんだよと、自分自身を戒めながら言っている感じですね。

――西城さんの「1つ目」は?

 まず"歩き"を早く良くしたいですね。焦っちゃいけないから丁寧に丁寧に、今は結果を求めないで毎日、丁寧にやること。「2つ目」は寒暖の差に気を配ることで、「3つ目」はストレッチで柔らかくして血流を良くすること。

 実は今日(取材日)、2度目の病気になった日なんです。去年の12月19日。だから今日は怖くて仕方ないんですよ、暖かくして、とりあえず今の時間まで無事だなって、恐怖心とずっと闘っています。本当はずうっと、2~3日前から怖くてしょうがない。(大丈夫という)保証なんてないですからね。

――他には、始めたことはありますか?

 リハビリのイメージで色のなさ、地味さを感じたので、僕にできることはないかなと考えることがあります。何かやりたいなと。医療現場を楽しくしたいんですよね。みんなそういう気持ちは一緒だと思います。だって、僕みたいな人は大勢いるんですよ。リハビリを始めて、「世の中には、病気の人がこんなにたくさんいるんだ」と驚いたくらいなんですから。

 リハビリは、年配になればなるほどきついわけです。でも、できないって諦めちゃいけないわけで、どうせリハビリをするなら生きがいとか楽しみを見つけられるようにしていかないといけないと思うんですよ。楽しみながらするための仕掛けが必要なんです。

 若くして病気になった人もいるんだから、リハビリ中でもおしゃれをさせてあげたい、特に女性には。例えば、ゴルフやるためのゴルフウエアとかはあるのに、リハビリ用は何でないんだろうと思いましたよ。楽しむためにはどうしたらいいのかなと、日々研究しています。

 もちろん、医療に関わることだと、薬などと同じで認可などさまざまな手続きが必要で、簡単ではないんですけどね。このままにしていたらつまらないと思っているので、僕がやれることがあって、一緒にやってくれる人がいるなら頑張ってみようかなと思って、動き始めているところです。

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