西城秀樹さんインタビュー(脳梗塞との闘い)(4)

2013年01月21日 15:48 公開

西城秀樹さんインタビュー(脳梗塞との闘い)(4)

第4回:「ありのまま」とは?

――それにしてもつらい体験でしたね。

 なぜ? ってよく聞かれるんですよ、インタビューとかで。あなたはなぜ「西城秀樹」を捨てて、ありのままで生きるってことを選んだんですか? って。でも、「なぜ?」ってなぜ聞くの? と思います。

 そうしないといられないんですよ、生きてられないんですよって思う。「前を向いて頑張るよ」っていうことしかないんですよ、僕に残された道は...。だって、結果を求めちゃったら悔しいじゃないですか。今はだから、とにかく目の前のことをやろうと思っています。

―――複雑な気持ちなんですね。

 それはあります。自宅で子供が2010年のコンサートのDVDを見ていたんですけど、それを見ていたらとてもつらくなりました。もう二度と見たくないくらいに...。今はようやく笑って見られるようになったんですけどね。ただ、今でも、ファンの皆さんには申し訳ないという気持ちはいっぱいです。やっぱり、コンサートなんかで自由に動けないじゃないですか。それがつらい。

 病気したら何だかファンの幅が広がったみたいで...。それだけ患者って多い、病気を抱えて同じ気持ちになっている人がたくさんいるんだなと思いました。コンサートとかに来てくれる人たちは、なぜかみんな泣くしね(笑)。多分、病気を乗り越えて頑張って動いている、そんなところを見てみんな泣いているんだと思うんですが、泣きに来られても困るんだけどなあなんて(笑)。今の姿をしっかり見ておいてもらって、次はもう少し元気になったところを見せなくちゃと思うから頑張れる、というのもあります。

――やはり西城さんにとっては歌うことは本当に特別なこと?

 なぜ歌だけは歌えるんだろう? と思いました。神様に「まだ死ぬわけはいかないよ、生きなさい」と言われているような気がするんですよ。そうとしか考えられないですね、こうなっている以上。

 それと、もう一人の自分が自分に、百の質問をしているみたいにいつも問答しているんです。言葉で答えても「分かりにくいから行動で示して」と、また自分の声が聞こえる。自分の声が聞こえるようなことは、初めての経験です。

――それだけ自分の人生について考えたということでしょうか?

 長く生きたいけれど、やっぱり死に関しては考えます。いい死に方したいよなと。10人いたら10人とも違うと思いますが、成功したからっていい死に方とは限らなくて、成功しなくても自分にとって「いい友達がいたな」とか「楽しい人生だったな」とか思えるかどうか、息引き取る時に悔いがなるべく少ない方がいいと思いますね。

 人間、誰しも悔いのない人生を送りたいと思うだろうけど、だからといって自分がいい死に方をしたいというだけでも済まないんですよね。僕には家族がいるんだから。もちろんそんなことは年齢を重ねればみんな考えることでしょうけれど、考えた時期にたまたま病気もしたということです。

 病気はしたけど「もうダメ」なんじゃなくて、「悔いのない人生」を送れる可能性はまだあると思い直し、可能性があるならそれに向かって進もうと、やっとそこに目を向けた。それが、自分が自分に目を向けたということだったんです。

――西城さんにとっての病気とは?

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 本当は病気になんかなりたくはないですよね。でも、なったら受け入れないといけない。受け入れて付き合って、病気と友達にならなければしょうがないと思っています。なったからには、病気になって何がよかったんだということを見出していかないと生きて行けないですよね。

 つらいですよ。だから頑張るしかない。リハビリセンターに行く前は「いやあ、これは重い、つらい」と思っていても、リハビリセンターに行くと僕よりもっと大変な方がたくさんいるんですよ。ここに来ると優等生だと思ってみたり。でも、家にいると「劣等生だなあ...」と感じて、また病院来ると優等生。いる場所によって、思うことがすごく違う。...ってことは、励ますのは自分しかいないわけです。頼っていたらだめで、自分でやらなきゃいけないと気づけたのがまたうれしいんですよね。その喜びを引き出して、励みにしているんです。

――読者の方、病気で悩んでいる方に今伝えたいことは?

 今日、話していることは、あくまでも僕の場合の僕なりのやり方です。病気を抱えている人には、あなたにはあなたのやり方があるから、それが早く見つかるといいですねと言いたい。それで、本当に大事なのは続けるということですと。"継続は力なり"っていうけれどまさに! 昔の人はすごいなあって思いますよ(笑)。とにかく結果は置いといて、今やることをやろう、今の一歩が重要なんだとも伝えたい。

 自分がリハビリセンターに行った時も、みんなを連れて公園に行きたいと思いました。「歩く練習をやろうよ」って言いたくなったんです。もちろん、実際には病気の状態も違うし、歩く力もそれぞれだから実現は難しいのかもしれないけど、それでもできる人はみんなで一緒にやりませんかって言いたい。裏を返すと、そのくらい心が折れそうな毎日なんです。でも、生きる楽しみ見つけようよ、それがリハビリでもいいじゃない! と思うんですよね。

 脳卒中は色々種類があって、治療やリハビリの方法もきっとそれぞれで違うのだろうと思います。でも、病気をしたら、どう考えてどうやっていったらいきいきと自分らしく生きられるかということを見つけてほしいと願います。

(取材:さえき文香/撮影:さとうわたる)

西城 秀樹(さいじょう ひでき)

 1955年、広島県生まれ。幼少期から洋楽に親しみ、15歳の時に歌手を目指して上京。16歳でデビューして瞬く間にトップアイドルの座に上り詰める。野口五郎、郷ひろみとともに"新御三家"と呼ばれ、数々の音楽賞を受賞。歌手としての活動以外にも、ドラマ、映画、CMなどでも活躍。派手な衣装と演出、親衛隊と呼ばれる称される熱狂的なファン、さらには日本初のスタジアムコンサート開催や日本人初のアジア進出などで話題をさらった。2003年、公演先の韓国で脳梗塞を発症。復帰後、順調に活動を続けていたが、2011年暮れに脳梗塞を再発。リハビリに励みながら翌2012年、再び復帰を果たした。

公式サイト : http://www.earth-corp.co.jp/HIDEKI/

近著紹介

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『ありのままに~「三度目の人生」を生きる~』
(廣済堂出版)

 二度の脳梗塞との闘い、リハビリ、右半身のまひは残ったまま復帰した仕事への思い...。死を考えたことも一度や二度ではなかったという壮絶な日々や葛藤をさらけ出す一方、家族はじめ周りとの関わりを綴った一冊。今回のインタビューで、西城さんは「三度目の人生」「ありのままに」というタイトルについて、「自分の気持ちそのままだから」として、予定されていたタイトルを変更して付けたと語っています

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