2013年01月23日 10:18 公開

下痢治療の切り札は「他人の便」? 標準治療上回る効果

オランダ研究

 粘膜を破壊する毒素を持つディフィシル菌(Clostridium difficile)に感染すると、より症状が重い下痢に悩まされる。特に再発を繰り返すケースでは抗生物質を飲んでも効かない場合多く、治りにくいことで知られている。こうした中で報告されたのが、健康な人の便を十二指腸に注入する方法だ。オランダ・アムステルダム大学学術医療センターのEls van Nood氏(内科)らは、再発を繰り返すディフィシル菌感染症患者を対象に、これまでの報告よりも精度の高い研究手法でこの方法を検討。その結果、抗生物質(バンコマイシン)による標準療法よりも有効な可能性が示されたと、1月16日発行の米医学誌「New England Journal of Medicine」(電子版)に報告した。

腸洗浄後に便を注入

 ディフィシル菌感染症を初めて再発した場合、バンコマイシンによる治療が効く確率は6割程度。再発を繰り返すたびにこの確率は下がっていくという。再発する原因は、毒素に対する抗体の反応が鈍くなることのほか、腸内細菌の種類が偏ることなどが考えられている。

 そこで提案されたのが、ディフィシル菌感染症患者の腸内を洗浄した上で、健康な人の便を移すことにより、腸内細菌叢(そう)が正常な状態に戻るのではないかという考え方。これまでも、フィンランド・ヘルシンキ大学中央病院のEero Mattila氏ら(米医学誌「Gastroenterology」2012; 142: 490-496)など複数の試みが報告され、その有効性が主張されていた。

 van Nood氏らは、これらの報告を裏付けるため、より精度の高いランダム化比較試験という手法で検討。再発性ディフィシル菌感染症患者43人を、下記の3グループにランダムに割り付けた。

  1. 便注入群(17人)......バンコマイシン500ミリグラムの1日4回服用を4日間行い、腸洗浄後に健康な人の便の溶液を鼻から挿入するチューブで十二指腸に注入する。
  2. 標準療法群(13人)......バンコマイシン500ミリグラムの1日4回服用を14日間行う。
  3. 標準療法+腸洗浄群(13人)......バンコマイシン標準療法に加えて腸洗浄を行う。

 なお、健康な人から採取された便は0.9%生理食塩水で薄め、採取後6時間以内(平均3.1時間)に患者に注入。注入した便の量は平均141グラムだった。

16人中13人が初回で治癒

 1次評価項目はC. difficile感染関連の下痢が軽快し、10週後も再発がない無再発治癒の状態とした。

 検討の結果、1人が除外された便注入群16人のうち13人(81%)でディフィシル菌に関連した下痢が軽快。便の提供者を変更して2回目の便注入を試みたところ、残り3人のうち2人で下痢が軽快した。これに対し、標準療法群で下痢が軽快したのは13人中4人(31%)、標準療法+腸洗浄群では13人中3人(23%)だった。

 10週間後も再発しない治癒の状態だったのは、便注入群は全体で93.8%、初回のみでも81.3%に上り、他の2群(標準療法群30.8%、標準療法+腸洗浄群23.1%)と比べて統計学的に顕著な差が認められた。

 なお、便注入群以外の2群で再発が認められた患者18人中(脱落例1人を除く)便注入療法を試したところ、11人が初回で軽快、4人が2人目で軽快したという。

腸内細菌のバランスが改善

 有害事象(副作用)については、便注入群で注入当日に軽度の下痢と腹部の痙攣(けいれん)痛が認められたことを除けば、3群間で差はなかった。

 さまざまな分析方法で腸内細菌叢を見てみたところ、便注入後には提供者と同じレベルにまで改善していた。つまり、健康な人の便を注入することで腸内細菌のバランスが改善し、下痢が治癒したということだ。

 以上の結果からvan Nood氏らは、便注入療法は再発性ディフィシル菌感染症に対する有効な治療法であるとランダム化比較試験によって示されたと指摘。「とりわけ、再発を繰り返し、バンコマイシンが効かない患者には朗報かもしれない」と締めくくっている。

(編集部)

  • ランダム化比較試験......被験者を無作為に処置群と比較対照群に分け、効果を測定する研究手法。介入研究の一つ。RCT、無作為化比較試験。

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