2013年02月21日 09:30 公開
いがん(胃がん)」に関連する記事です。

ピロリ除菌、胃炎でも保険適用へ―「胃がん撲滅元年」に

 高齢化に伴い、胃がんになる人が増えている。胃がんの原因の9割以上を占めるのがピロリ菌(Helicobacter pylori)だが、これまで胃潰瘍などの病気がなければ除菌に健康保険が適用されず、自費で行うしかなかった。こうした中、2月22日に除菌療法の適応症が拡大され、慢性胃炎に対しても診断と除菌が保険適用されることとなった。北海道大学大学院医学研究科の浅香正博特任教授(がん予防内科学)は、2月10日に札幌市で開催されたセミナーで、今回の適応拡大の意義を強調。2013年を「胃がん撲滅元年」と位置付け、若年者と50歳以上に対する除菌療法の在り方などを解説した。

自己負担1万7,650円が5,295円に

 浅香特任教授によると、2020年には団塊の世代が70歳を超えることから胃がん患者のさらなる増加が見込まれており、現在の約23万人から30万人以上、年間死亡数は現在の5万人から6万人となるおそれがあるという。

 そこで注目されているのが、2月22日に適応症が拡大されるピロリ菌の除菌だ。具体的には、慢性胃炎の段階で「ピロリ感染胃炎」として、内視鏡検査を含めた診断と除菌治療が保険診療で行えるようになる。慢性胃炎の段階で除菌ができれば、胃がんの発症や死亡数の減少だけでなく、医療費削減も期待される。

 浅香特任教授は、ピロリ菌の除菌のみでほとんどの胃の病気を抑えられる若年者と、除菌後も経過観察が必要な高齢者に分ける「胃がん撲滅プロジェクト」を提案した。

 若年者への対策としては、ピロリ菌が陽性の人には即、除菌治療を行う。一方、50歳以上については、ピロリ菌が陽性だった人、陰性でも家族で胃がんになった人がいる場合、過去に内視鏡検査で萎縮性胃炎と診断された人では内視鏡検査を行い、ピロリ感染胃炎だったら除菌治療。萎縮性胃炎があれば1~2年に1回の経過観察を行う。

pylori.gif

 費用はいずれも、ピロリ菌検査が8,350円(診断に2,650円、除菌できたかどうかの検査に5,700円)、除菌治療が9,300円の計1万7,650円だが、今回の適応拡大によって3割負担の健康保険なら自己負担は5,295円で済むことになる。

胃がんの減少で医療経済的にも改善

 医療経済的な効果はどうだろうか。現在、胃がん治療の年間費用は、日本全体で見ると内視鏡手術(内視鏡的粘膜下剥離術)が約145億円、外科手術と入院が約1,900億円、化学療法(薬)が約1,000億円で、計3,000億円ほどかかっている。適応症の拡大でピロリ菌を除菌される人が増え、胃がんの発生率が25%減少したとすると、日本全体の年間費用は2,620億円に減り、発生率が半数になると2,260億円まで減るという。

 また、50歳以上では内視鏡検査を行うことで、早期胃がん(ステージ1)の発見率が現在の6割から8割に上昇し、残り2割の大半がステージ2だとすると、予後は早期胃がんの5年生存率が90%台、ステージ2が80%台とされていることから、胃がん全体で5年生存率が60%から90%に改善し、5年間で8万人の胃がんによる死亡を防ぐことができることが期待されている。

 浅香特任教授は「対策なしでは、胃がんによる死亡者数と医療費が増大していく一方。保険適用により除菌治療と病気の調査・報告体制を確立させることで、胃がん死亡の激減と医療コストの節減が可能となるので、今年を"胃がん撲滅元年"として捉えたい」と述べた。

(編集部)

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