2013年03月06日 18:17 公開

「うつ病とてんかん一緒でない」悪質運転罰則案に反対

日本うつ病学会

 交通事故を起こして相手を死傷させた場合、悪質な運転だと「危険運転致死傷罪」(最高刑・懲役20年)か「自動車運転過失致死傷罪」(同7年)のどちらかが適用されるが、その中間として、無責任な運転者に対する罰則の新設が国から提案されている。日本うつ病学会は3月5日、新罰則の対象者に統合失調症、うつ病、双極性障害(そううつ病)が挙げられている点について反対を表明、再検討するよう求める要望書を公表した。新罰則の対象については、日本精神神経学会や日本てんかん学会も要望書を提出しているが、日本うつ病学会は「てんかんのように意識障害を伴う病気とそうでない精神障害とを、医学的に区別することなく一緒に論じていることは極めて非科学的」と強い語調で批判している。

最高刑は懲役15年

 自動車の運転中に人を死傷させた場合、以前は「業務上過失致死傷罪」(最高刑・懲役3年)が適用されていたが、2001年に最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪を新設。さらに、2007年には最高刑が懲役5年の自動車運転過失致死傷罪が設置された。

 ところが、危険運転致死傷罪は立証が難しい上に成立させる条件がとても厳しく、例えば、無免許運転やてんかんなどの意識を失う可能性のある病気が原因の事故では適用されない。2011年に栃木県鹿沼市で起きた児童6人がクレーン車にはねられて死亡した事故でも、クレーンを運転していたてんかんの持病がある男には自動車運転過失致死罪が適用され、懲役7年が確定している。

 そこで提案されているのが、二つの罪の中間に位置する罰則の新設だ。法務省は昨年10月から専門家会議を重ね、被害者団体からの聞き取りを行った上で、今年1月に法改正の原案となる「要綱案」を公表した。飲酒や薬物、病気の影響で正常な運転できなくなる恐れがある状態で、負傷事故を起こした場合は懲役12年、死亡事故では懲役15年が上限とされている。

 日本うつ病学会が再検討を求めているのは、ここで対象となる病気のことだ。要綱案では統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、そううつ病(うつ病と双極性障害)、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害、認知症、アルコール・麻薬・大麻・アヘンまたは覚せい剤の中毒者が対象となっている。

「規制するなら根拠示すべき」

 要望書ではまず、「特定の病名に基づく免許の制限は、障害者の社会参加や差別解消という観点から適切でなく、かつ医学的にも妥当性がない」とし、社会生活・雇用に大きな影響と不利益をもたらし、無用な偏見を生む恐れがあると指摘した。

 また、うつ病と双極性障害を含む気分障害は、病気になり始めの症状が激しい時期でも意識障害が出ないため、「規制を行うのであれば、気分障害を持つ人の事故が多いという事実があるのかどうか根拠を示すべき」と主張。さらに「てんかんのように意識障害を伴う病気と意識障害を伴わない精神障害とを、医学的に区別することなく一緒に論じていることは極めて非科学的」と批判した。同様の反対意見および再検討を求める要望書は、日本精神神経学会からも提出されている。

 一方、日本てんかん学会は、てんかん患者の大半が、治療によって運転に支障がない状態であり、罰則対象に病名を挙げることは、不当な差別や偏見を助長する危険性があると主張。法案に特定の病名を盛り込まないことなどを要望した。

(編集部)

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