2013年04月05日 12:00 公開

あなたの腎臓は大丈夫? 健診結果で自己チェック

 腎臓が働かなくなる腎不全。この病気になると、血液透析療法(人工透析)が必要となり、多額の治療費がかかる。近年、この透析患者が増えており、腎機能が低下する病気を一括して「慢性腎臓病(CKD)」と呼び、病気の進行を早期に予防しようという動きが活発になってきた。CKDの診断の際に考慮される腎機能とは何か。健康診断の結果から自分でチェックできるよう、中山寺いまいクリニック(兵庫県)の今井圓裕院長に解説してもらった。

腎臓の機能は「GFR」で分かる

 腎臓の役割のうち、特に重要なのは、腎臓内にある「糸球体」と呼ばれるフィルターの能力。糸球体は、血液中の老廃物を捨てる役割を担う。腎機能の評価に当たっては、1分間で糸球体がろ過することのできる血漿(けっしょう=血液から赤血球、白血球、血小板を除いたもの)の量(糸球体ろ過量=GFR)を測る。実際には、以下に示す血漿中の物質がろ過される量を調べる。

・イヌリン

 イヌリンは人体に無害な炭水化物の一種で、血液の中に注射すると糸球体でろ過される。糸球体を通過した後に全てが尿として排泄されるため、尿中に排泄されたイヌリンの量を調べることにより、1分間でイヌリンがどのくらい糸球体を通過したか(イヌリンクリアランスという)を計算すれば、GFRを正確に測定できる。ただし、時間を計りながら点滴、採尿、採血、水分摂取をする必要があり、患者の負担は大きい。

・クレアチニン

 日本ではクレアチニンを用いた測定が主流。体の中でイヌリンとほぼ同じ性質を示すクレアチニンは、イヌリンと違い、筋肉で生み出される老廃物なので、測定のために注射する必要がない。

 1分間でクレアチニンがどのくらい糸球体を通過したか(クレアチニンクリアランス)は、下記の計算式で求める。ただし、計算に必要な尿中クレアチニン濃度を測るには、1日分の尿を集める(蓄尿という)必要があり、患者にとってはなかなか大変だ。

クレアチニンクリアランスを求める式

クレアチニンクリアランス(mL/分)
= 尿中クレアチニン濃度(mg/dL)×1分間の尿量(mL/分)÷ 血液中のクレアチニン濃度(mg/dL)

血清クレアチニン値で腎機能が分かる

 採血のみで腎機能が測れるようにと考案されたのが、血清クレアチニン検査。糸球体でろ過されて、尿として排出されるべきクレアチニンが、血液中にどのくらい残っているかを調べる。正常値は、男性で血清1デシリットル当たり0.8~1.2ミリグラム、女性で同0.6~0.9ミリグラム。血清クレアチニン値は、健康診断の際に測ることもある身近な数値だ。しかし、腎機能が60%以下にまで下がらないと異常値を示さないため、軽症のCKDの発見にはあまり向いていないと言える。

推算GFRを計算!

 血清クレアチニン値による腎機能の評価には、さらに難点がある。この評価では個人の筋肉量の影響を受けてしまうのだ。そこで考案されたのが、筋肉量の誤差を補正する計算式。健診結果にある血清クレアチニン値を年齢、性別とともに以下の式に入力すれば、自分で推算糸球体ろ過量(eGFR)を求められる。

日本腎臓病学会が推奨する日本人のGFR推算式

eGFRcreat(mL/分/1.73m2
= 194×(血清クレアチニンmg/dL) -1.094×(年齢歳) -0.287(女性はこれに×0.739)

計算する

 なお、GFRの正常値は90mL/分/1.73m2以上。「1.73m2」は、「体表面積が日本人の平均である1.73m2の場合(身長170cm、体重63kgくらいの体格)」という意味。もし体が小さく、自分の体表面積が1.5m2なら、計算式から得られたeGFRに(1.5÷1.73)を掛ければ体表面積補正を外したGFRが求められる。

図表
「CKD診療ガイド2012」より抜粋

体表面積を求める式

(体表面積m2
= (体重kg)0.425×(身長 cm)0.725×0.007184

計算する

極端に痩せている人は「シスタチンC」を測定

 クレアチニンは筋肉量が極端に少ない人や下肢切断者、また、長い闘病生活で極端に痩せてしまった人などでは、あまり産生されない。つまり、腎機能を測定する目安として用いることはできない。その場合は、代わりにシスタチンCを測ることがある。

 シスタチンCは、全身の細胞から一定の割合で産生される物質。軽度の腎機能低下で血中濃度が上昇するため、CKDの早期発見の指標として期待が寄せられている。

シスタチンCを使ったGFR推算式

男性 eGFRcys(mL/分/1.73m2)= {104×(シスタチンC mg/dL)-1.019×0.996年齢 }−8

女性 eGFRcys(mL/分/1.73m2)= {104×(シスタチンC mg/dL)-1.019×0.996年齢 ×0.929}−8

CKDの予防法は?

 CKD増加の主な原因の一つが糖尿病。糸球体は、糖を多く含む血液をろ過していると、フィルターに糖が沈着し、機能が低下してしまう。このCKDは「糖尿病性腎症」と呼ばれ、日本に約1,000万人存在する糖尿病患者の30〜40%に発症するといわれる。

 また、高血圧も主なCKDの原因で、高血圧患者では、腎臓の血管に動脈硬化が起こり、血管の内側の幅が狭くなる。すると、腎臓へ流れる血液が減り、腎臓そのものが硬くなって機能が低下してしまうという。

 今井院長は「糖尿病の場合は初期段階からの血糖コントロール、高血圧の場合は減塩や血圧のコントロールがCKD発症・進展の予防のポイントとなります」とアドバイスしている。

(宮下 直紀)

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