関節リウマチと判断されたら
2013年04月15日 18:00 公開

「関節リウマチは治る」を可能にした生物学的製剤ってどんな薬?

4.「関節リウマチは治る」を可能にした生物学的製剤ってどんな薬?

4-1 生物学的製剤とはどんな薬?

 関節リウマチの治療を大きく変えた立役者が生物学的製剤です。痛みや腫れなどの炎症反応を起こすさまざまな物質(炎症性サイトカイン)が明らかになり、それを標的とした生物学的製剤が開発されました。生物が作り出すタンパク質を利用するという、最新のバイオテクノロジー(生物工学)を駆使して誕生した薬なので、生物学的製剤と呼ばれています。この薬剤が登場したことによって、炎症性サイトカインの働きを中和して強力に炎症を抑え込む治療が可能になったのです。

 2003年に承認されたインフリキシマブ(商品名レミケード)を筆頭に、エタネルセプト(同エンブレル)、アダリムマブ(同ヒュミラ)、ゴリムマブ(同シンポニー)、トシリズマブ(同アクテムラ)、アバタセプト(同オレンシア)、セルトリズマブ ペゴル(同シムジア)の7つの生物学的製剤が登場しています。どの薬もこれまでの抗リウマチ薬と比べてとても高額ですが、有効性は高いです。関節破壊を抑えて修復する効果を示すのは、生物学的製剤だけの特徴です。メトトレキサート(MTX)で治療効果が不十分な場合には、速やかに生物学的製剤を開始することが勧められます。

4-2 生物学的製剤はどのくらい効果があるの?

 生物学的製剤が承認を受ける際に行った臨床試験の成績によると、生物学的製剤を単独で使った場合40〜70%、MTXと併用して使った場合70〜80%と、どの製剤でも高い効果が示されています。特に、関節リウマチと診断がついて2年以内の発症早期に生物学的製剤とMTXを併用した場合、5〜7割の人が寛解(症状が落ち着いて安定した状態)を達成するといわれています。

 このように治療効果が高い薬なので、今では一定の期間(だいたい半年くらい)、寛解の状態が続いた場合には、使っている生物学的製剤の量を減らしたり、使用を休止したりして寛解が維持できるかどうか、経過を見るようになっています。生物学的製剤をブシラミン(商品名リマチルほか)など、従来の抗リウマチ薬に切り替えて寛解を維持する治療も、試みられるようになりました。

 生物学的製剤を休止したものの再び病状が現れた場合には、速やかに生物学的製剤を再開します。それで再び寛解に至る人が多いようです。

4-3 生物学的製剤の副作用は?

 生物学的製剤の主な副作用には、点滴中や点滴終了後の発熱、頭痛、発疹など(投与時反応)、注射した部位が赤くなったり腫れたりする注射部位反応、感染症、まれに免疫異常による別の病気の発症などもあります。

 生物学的製剤は、TNFαやIL-6、T細胞といった、本来は感染を防御する役割を持っている物質の働きを強力に遮断するため、関節リウマチによる炎症を抑えてくれる一方で、感染症が起きる可能性を高めてしまいます。そのため、最も多く見られる副作用は感染症です。これまでの臨床成績によると、6〜18%の人に感染症(主には感冒など)が見られ、1〜4%の人に重症の感染症が出現しました。

 問題となる感染症としては、細菌性肺炎(0.5〜2.2%)、ニューモシスチス肺炎(0.1〜0.4%)、結核(0〜0.3%)があります。

 特に感染症を起こしやすいのは、65歳以上の高齢の人や呼吸器疾患を持っている人、糖尿病にかかっている人などです。

 感染症は早期に見つかれば対処できます。治療を受けている中で、「せきが出る」「喉が痛い」「息が切れる」「38度以上の発熱がある」「風邪のような症状がある」などを感じた際には、速やかに医師に相談しましょう。

 生物学的製剤の治療を開始する際に次のような項目を確認します。

4-4 生物学的製剤はそれぞれどう違うの?

 生物学的製剤は、「標的物質」「標的物質に対する作用」「使用方法」「使用スケジュール」がそれぞれ異なります。生物学的製剤を始める際には、それぞれの薬の特徴を理解し、自分の症状、治療目標、ライフスタイルに合ったものを医師と相談の上で選びます。薬の選び方に正解や誤りといったものはありません。

 仮に副作用が出た場合にも、薬の量を調節したり、副作用を抑える薬を併用したりして、コントロールできることが多いのです。効果を実感する中で使用方法にも慣れていくものなので、自分の治療目標に向けて、使い始めた薬と上手に長く付き合っていく心構えが大切です。

生物学的製剤の一覧

4-4-1標的物質とそれに対する作用の違い

標的物質の違い

 関節リウマチに関わる炎症性サイトカインとして中心的に働くのは、TNFαとIL-6です。TNF阻害薬は、生物学的製剤として最初に登場したレミケードを筆頭に使用実績が豊富で、有効性や副作用などの評価が定まっているため、まず初めに使う生物学的製剤とされています。また、TNFαを抑えることでIL-6の働きも低下することや、TNFを抑える方が関節炎に対して速効性があること、十分な量のMTXと併用すれば骨の表面が削れて見える「骨びらん」を修復する可能性が高いことなども、その理由として挙げられます。レミケードはMTXとの冷えようが必要ですが、他のTNF阻害薬もMTXとの併用により効果が高まるので、十分な量のMTXと併用することが勧められます。

標的物質に対する作用の違い

 生物学的製剤は、標的物質に対する作用の違いによって抗体製剤と受容体製剤に分かれます。どちらも標的物質に結合して、その働きを抑えることが主な作用ですが、抗体製剤は結合が長続きし、標的物質が細胞の表面に顔を出している場合には、その細胞を破壊する場合もあります。受容体製剤は、体の中で実際に起こっているのと同じように標的物質に結合し、その作用を中和します。

4-4-2使用方法と使用スケジュールの違い

使用方法の違い

 生物学的製剤の使い方は、「点滴」と「皮下注射」に分かれます。

4-4-2使用方法と使用スケジュールの違い

点滴の特徴

  • 予約日時を守って通院する必要がある
  • 点滴中、医師や看護師が近くにいるので安心感がある
  • 家で薬を保管しなくてよい

 点滴の場合、予約した日時に通院して受けます。点滴は薬をゆっくりと体内に入れていくため、開始から終了までに時間が必要です(30分〜2時間程度)。好きな音楽や本などを持ち込んでリラックスして受けることもできます。点滴中、何か気になることがあった場合も、医師や看護師が近くにいて対処してくれるので、安心して受けることができます。

皮下注射の特徴
  • 点滴に比べて短時間で済む
  • 在宅自己注射を選択できるものもある(エンブレル、ヒュミラ、シムジア)
  • 在宅自己注射の場合、注射剤を自宅で管理する必要がある
    (シンポニーは通院して受けるので、その必要はない)

 皮下注射の場合、点滴に比べて短時間で済むのが特徴です。週1回や2週間に1回と使用する間隔が短い薬では、自分で注射するという選択肢もあります。その場合、注射剤を自宅の冷蔵庫で保管することになるので、一緒に住んでいる家族、特に子供の手の届かないように気を付けます。使い終わった注射剤は医療廃棄物なので、家庭のゴミと一緒に捨ててはいけません。病院から渡される専用の箱に入れ、通院する際に持参して所定の場所に廃棄します。

 エンブレルとアクテムラの注射剤には、いわゆる注射器(シリンジ)のほかにオートインジェクターもあります。オートインジェクターはペンのような形をした自動注射器で、ボタンを押すだけで針先を見ずに、簡単に薬液を注入できるよう工夫されています。

 自己注射は1カ月以上通院治療を受け、十分に使い方を学んだ後で行います。多忙な人、通院が困難な人に向いています。痛みを強く感じる人もいますが、「関節リウマチの痛みに比べれば問題にならない」と、大方の人が受け入れられているようです。

使用スケジュールの違い

 生物学的製剤は、使用する間隔が製剤によって大きく違います。最も使用間隔が短いものはエンブレルの週2回、一番長いものはレミケードの8週間に1回です。

使用スケジュールの違い
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