おしっこのおはなし
2013年04月22日 18:00 公開

2章 心配なおしっこ

 体に何らかの異常が起こっているとき、健康であれば見つからないはずのないものが、おしっことして出てきます。病気になると、おしっこに何が見つかるのでしょうか。この章では、泡立つおしっこや変なにおいのおしっこなど、注意をすれば気付くことのできる異常と病気の関係について学びます。

泡が立つ

 心配なおしっこの出方の一つに、「泡立ち」があります。長時間泡立ちが消えないおしっこは、その中にタンパク質が多く含まれていることを示しています(「タンパク尿」といいます)。タンパク尿には表面張力が強く働くので、泡が長時間消えないのです。

 このような泡は、ネフローゼ症候群のサインの一つです。ネフローゼ症候群とは、血液中のタンパク質の濃度が下がり、体がむくむ病気です。通常、血液中のタンパク質は糸球体を通過せず、血液中にとどまります。しかし、ネフローゼ症候群では糸球体に異常が起こっているため、タンパク質が糸球体を通過してしまい、おしっこの中に流れ出てきます。タンパク尿が見られた場合、医療機関を受診しましょう。

 ただし、激しい運動や入浴後、発熱時には、一時的にタンパク尿が出る場合があります。体内で増えた酸が糸球体毛細血管壁に影響を及ぼして、タンパク質が糸球体を通過しやすくなるためと考えられています。検尿前の激しい運動は控えましょう。

甘いにおいがする

 甘いにおいがするおしっこは、糖尿病のサインかもしれません。甘いということは、糖が含まれていることを意味します。通常、血液中の糖分は、糸球体は通過しますが、尿細管でほとんどが再吸収され体内に戻ります。尿中に排泄されるのは、糸球体を通過する糖の1%未満です。つまり、尿中の糖はごく微量のため、甘いにおいなどするはずがありません。

 しかし、血液1デシリットル当たりの糖の濃度が約180ミリグラムを超える糖尿病患者さんの場合(健康な人は、空腹時の血糖値が80〜110ミリグラム、血糖値が高くなる食後でも140ミリグラム未満)、おしっこが甘いにおいになることがあります。原尿に含まれる糖の濃度が尿細管で再吸収できる限度を超えてしまい、糖がおしっことして排泄されてしまうためです。

 ただし、まれに血糖値に問題がないのに、甘いにおいのおしっこを出す人もいます。尿細管で糖の再吸収を担っている「SGLT2」というタンパク質が生まれつき機能していない人です。彼らの症状は、(家族性)腎性糖尿と呼ばれます。腎性糖尿患者さんは1日に数グラム~100グラム以上の糖を排泄しますが、腎機能は至って正常で、生涯にわたり普通に生活できます。

 逆に考えれば、糖尿病患者さんが腎性糖尿患者さんのような腎臓を持てば、おしっこで糖をどんどん出して血糖値を下げられるのではないかというアイデアが生まれます。実は、この考え方に基づく新しい糖尿病の治療薬「SGLT2阻害薬」が、現在開発されています。この薬は、尿細管における原尿からの糖の再吸収を減らし、糖をおしっこから出してしまう薬です。

刺激臭がする

 1章ではさんざん「おしっこはごみ」と述べましたが、おしっこは決して汚くはありません。一般に汚いものと思われがちですが、健康な人のおしっこは無菌なのです。

 では、なぜトイレには特有のおしっこ臭さがあるのでしょうか。それは、おしっこの成分である尿素が、細菌に触れたときに分解されてできるアンモニアのせいです。汗なども同様ですが、不快なにおいとは、細菌が水分に含まれるごみ(栄養素)に触れて初めて発生するものなのです(ただし、コーヒーやニンニクなどにおいの強いものを食べた場合、食べ物のにおいがそのまま出ることがあります)。

 もし、最初からおしっこがにおう場合は、原因として何が考えられるでしょうか。「尿路感染症」です。尿路とは、腎臓で尿が作られて排出されるまでにたどる道のことで、腎臓、尿管、膀胱、尿道で構成されています。これらの部位に細菌が感染し、炎症が起こる病気が尿路感染症です。

 尿路感染症では、便器ではなく尿路のどこかににおいの原因である細菌が存在します。それらが尿素と反応してアンモニアが発生するため、おしっこが臭くなるのです。

濁っている

 尿路感染症の場合、見た目でも分かる場合があります。尿が濁っていたり、膿(うみ)を含む膿尿(のうにょう)が出たりするケースです。これらのおしっこは、白血球や細菌が混じっていると見られます。

 白血球は本来、細菌などの侵入者を退治すべく血液の中に常駐しています。しかし、尿路に細菌が隠れていると、細菌を退治しにやってきます。このため、尿路感染症患者のおしっこには、白血球と細菌が含まれることになります。性感染症や腎結核でも、同じ理由でおしっこが濁ることがあります。ちなみに、さらに感染が進んで炎症がひどくなったときや、尿路に結石ができて尿路の粘膜が傷つき出血をしたときには、血尿が出ます。

 また、白く濁るおしっこは、尿路結石症の注意報でもあります。尿路結石は、尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなり、それらが結合してシュウ酸カルシウム結晶が作られることでできます。尿中のシュウ酸濃度が上昇すると、おしっこは白く濁るのです。

甘酸っぱいにおいがする(柿の腐ったような)

 血液がケトン体の増加によって酸性に傾く(ケトアシドーシス)と、柿の腐ったような甘酸っぱいにおいのおしっこが出ます。においの原因は、ケトン体と呼ばれる脂肪酸やアミノ酸の不完全代謝産物です。

 ヒトは、エネルギー源として糖を利用することができないとき、脂肪を利用します。糖尿病や飢餓状態のときには、糖が利用できませんので、脂肪を利用することにより、ケトン体が多く作られます。おしっこだけでなく、呼気や体からにおうこともあります。

メープルシロップのにおいがする

 メープルシロップ臭の原因は、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)が正常に代謝されずに残る分岐鎖ケト酸です。分岐鎖ケト酸が増えると、血液が酸性に傾き、痙攣(けいれん)、精神遅滞が起こります。これを「メープルシロップ尿症」といいます。

 メープルシロップ尿症は、日本では約50万人に1人が発症する、まれな病気です。この病気にかかった乳児は、分岐鎖アミノ酸が除去されたミルクを選ぶ必要があります。代謝できない分岐鎖アミノ酸を摂取しないようにするためです。

ネズミのにおいがする

 人間が栄養として食べ物から摂取しなければならないアミノ酸。その一つに「フェニルアラニン」があります。過剰なフェニルアラニンは中枢神経に作用し、精神発達遅滞(歩行や発語の困難など)をもたらしますが、通常は体内で分解されるため、問題を起こすことはありません。しかし、「フェニルケトン尿症」の人は、フェニルアラニンを体内でうまく代謝できないため、血液中のフェニルアラニン濃度が上がり、おしっこからネズミのにおいがするようになります。

 フェニルケトン尿症では、血液中の過剰なフェニルアラニンがフェニル酢酸に変化して尿中に現れます。このフェニル酢酸がネズミのにおいを有するため、おしっこがネズミ臭い場合、フェニルケトン尿症が疑われるのです。

 日本でのフェニルケトン尿症の発症頻度は約10万人に1人といわれており、現在は新生児を対象に行われる検査により発見できるようになっています。フェニルアラニンの摂取量を抑える食事療法により、知能障害を予防することができますが、治療を中断すると発症します。フェニルアラニンが除去されたミルクも市販されています。

おしっこの色が変!

 おしっこは、色で体内の変調を知らせてくれることがあります。健康な人のおしっこは、黄色~琥珀のような淡黄色で透明です。これは、ウロビリノーゲン、ウロビリンといった色素成分が含まれているためです。

 ところで、うんちの色もおしっこの色も、同じ色素がもとになっています。ビリルビンという色素です。正確には、ビリルビンがそれぞれ別の経路で代謝されて、うんちやおしっこの色のもとになる色素を作ります。ビリルビンは、血液の中にある赤血球に含まれているヘモグロビンが古くなって、脾臓(ひぞう)や肝臓で分解されてできる色素です。おしっこの色素のもととなるビリルビンは、腸内細菌によってウロビリノーゲンやウロビリンになります。これらは色素ですから、その量はおしっこの色に影響します。色が濃いほどウロビリノーゲンやウロビリンの排泄量が多いことを意味しますので、その濃淡から色素を分解する経路である肝臓や胆道の調子を推し量ることができます。

 血の色はもちろん、着色料を含む食べ物を食べたときや、薬の影響によって色が変化することもあります。異常が見られる場合、まずは泌尿器科か内科で尿検査をするとよいでしょう。

関連記事「赤、黄、緑...尿の色で分かる体の不調

 この章で述べたおしっこの異常と病気、その原因についてまとめました(図11)。普段からおしっこをよく観察して、病気の早期発見に努めましょう。ただし、おしっこに問題がなくても、腎機能の低下が進んでいることもあります。健康な人でも、年に1回は病院で尿検査をすることが望ましいでしょう。

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