小堺一機さんインタビュー(がんとの闘い)(2)

2013年05月15日 15:45 公開

小堺一機さんインタビュー(がんとの闘い)(2)

第2回:病気は「かわいく」「せいせい」と?

――首のがんに気づかれたのは?

 ヒゲをそっていたら、何かがポコッとできていて。そういう時に限って、たまたま首にしこりができた方の手記みたいな本を読んだんですね。その方が亡くなっていたので、あれ?と思って、かかりつけの先生にちょっと診てもらい、一回生検(患部の一部を切り取って調べる検査)をしたんですよ。そうしたら、その時は「大丈夫みたいですね、ただのしこりかな」と。でも、その先生が「もう一回診たい」って言うので、もう一回診てもらったら「ちょっと(腫瘍が)ある」ってことになって...。

 手術すると決まったときは、「ありゃりゃ」と思いました。僕が毎年続けている舞台「小堺クンのおすましでSHOW」の20回目の公演があるのに、手術を受けるならそれをやめなきゃならない。落胆しましたよ。でも、先生は「取らないとダメ。がんですから」って。

――病名は?

 僕にできたしこりの正体は、「原発不明頸部(けいぶ)リンパ節転移」。原発不明というのは原因のがんが見つからないということ。で、そのがんから転移して首にできたんですね。病名が難しくて、初めは何のことか分かりませんでした。分かりやすく "飛び火したオデキ"とか言ってくれればいいんですけどね。

 ...やっぱり、「死ぬんだ」ってことを考えましたよ。「人間いつかは死ぬって決まっている」って哲学者が言ったって、でも普通の人はそんなふうに思って生活していないですよね。「暮れにはどっか遊びに行こうかな」とか普通に思っているわけで...。告知されて「もしかして死んじゃうのかな」と思いました。

 先生に死ぬと言われたわけじゃないけど、「がん」って言葉がね。「がん」って名前が良くない。逆に病名はかわいくした方がいいですよ。「原発不明頸部リンパ節転移」なんていわないで、「どっから来たのかな君」とか「迷子ちゃん」とか。医者から「小堺さん、迷子ちゃんができています」と言われても、「え? あー、迷子ちゃんですか~」なんてふうに、あまり恐くなくなりますよね(笑)。

 で、結局、僕の場合は「原発不明」のままなんですよね。病気になったのは本当だったのかな、なんて思います。どっから来たんだ、押し売りかと(笑)。

 入院するまではいろんなことを考えました。でも、入院したらせいせいしちゃったんです。

――せいせいした?

 

 うまく説明できないんですが、もう入院したら先生にお任せするしかないんですよ。先生の言う通りやっていたらいいわけで...楽だったんです。身を任せるなんて言ったらカッコ良過ぎますけど、ジタバタしないっていうんですかね。どうしたらいいんだとか悩んでもしょうがないんだ、もう手術で入院しなくちゃいけないんだから、と思ったら楽になりました。

 病室入ったら逆に安心しちゃったんです。パジャマかなんかになってね、「明日はこうですよ」なんて医者や看護婦さんに予定を説明されて、「ありがとうございます」とか言って、家族なんかも「じゃあね」なんて帰って(ドアが)パタンって...。そしたら、「あれ、いいじゃんか」と思って。

 病室の窓から近くの高校のサッカー部の様子が見えて、「青春だな~」「みんな頑張ってね~」なんて思っちゃったりして(笑)。あれは不思議でした。

 入院したらもっと落ち込むのかと思っていたんですよ。入院していることを周りの人にあまり伝えてなかったので、お見舞いも来ないし、来るのは女房と両親くらいで寂しくなるのかと思ったら、何だか楽しくなっちゃって。朝は7時にご飯で、昼、夜そして午後9時には消灯って規則正しいし。本当は宵っ張りだから酒飲んで騒いだりしてきたんで、最初「寝られんのかな」と思っていたけど、気持ちよ~く寝られるんですよ。朝もパッと起きられるし。

 よし、このまま退院してもこれでちゃんとやって行こうと思っていたら、退院後はすぐに戻りましたけどね。あれは何だったんだろう。入院した時はすぐにスーって寝られたのは、現実逃避だったのかもしれないですね(笑)。

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