小堺一機さんインタビュー(がんとの闘い)(4)

2013年05月15日 15:45 公開

小堺一機さんインタビュー(がんとの闘い)(4)

第4回:極意「水のごとく」

――そうは言っても、一度病気をすると色々気にされる方も多いと思いますが...。

 まあ、またなったらしょうがないでしょうね(笑)。僕、いい意味で「しょうがないな」って思うんです。例えば「アンチエイジング」っていっても、その意味を取り違えちゃいけない。だって、いつまでも"美魔女"がいいかっていうと、「そうかなあ?」って思いませんか? 「あの人100歳だってよ」「ふーん」なんて会話、嫌でしょ? アンチエイジングとは"維持する"ということ、例えばカメラマンの方なら目は大事にしたいでしょうし、ピアニストなら指とか耳とか。そうやって維持することが結局、全体に行きわたると思うんですよ。どこか自分の大事にしたいところを大事にしてあげると、体って長屋じゃないけど連携して「おー、隣のはっつぁん頑張っているぞ」なんて感じで、他の部分も一緒に元気になってくれる気がするんです。

 僕は、目の前に来たことをやっていればいいと思います。目の前のことをちゃんとやろうってことが、未来につながっていくと。「努力」は他人に言われることですからね。たまに、人から「頑張ってますね」とか、例えばこの前も「すごいですね、あの番組30年も」って言われたんですけど、自分では30年間続けているなんて意識はないんですよ。

 富士山を登ろうとして、山頂ばかりを見ていたら登れないですよね? 目の前にある道を見ながら歩き続けて、気が付いたら頂上に着くわけじゃないですか。結局、やれることって"目の前に来ること"なんで、目の前に来たことをちゃんとやる。だから、病気でもなったときも「どうしよう」「半年たったらもっと悪くなるのかな」と思ったってしょうがないと。とりあえず、目の前にある階段を上っていけばいい、方向さえ間違ってなければ...。あまり気にし過ぎるのはよくないと思うんですよね、何事も。

――働き盛りに病気と闘うの方へのメッセージを。

 

 大切なのは、病気になっても「何で?」って思わないことかなと考えています。結局、何にも力の入っていない状態って一番強いですからね。"極意"っていうんでしょうかね。宮本武蔵さんの『五輪書』の中にあるんです、「水を本として」って。「本」とはお手本のこと。つまり「水のごとく」「水のように」ってことですよね。水は高いところから低いところに流れるし、決してさかのぼったりしない。岩に穴を開けることもできる一方で手でつかめないし、どんな形にもなる。お湯や氷なんかに形を変える。「水になっていればいいんだ」って思っています。型を作らないっていうのかな。「型には入ってもいいけど、自分は何にでもなれるようでいる」っていう感覚です。

 また、僕の親父もいいこと言ったんですよ。「"水っぽい"と"水"は違うだろ? "水っぽい"はまずくて、"水"はおいしいんだ。だから、"○○っぽく"はなるな」って。

 病気になるっていうことが、水にとって「このガラスのコップに入れ」ということだったら、「何で?」って思っても入らなくちゃいけない。なので、「じゃあ、コップの中に入ってからどうしよう」と考えるんです。

 とはいえ、普段と違う環境だからもちろん気にはなるんですけどね。入院したときにすごく思ったのは、「健康なら今日の予定をいくらでも作れるんだな」ってこと。「六本木に行って遊ぼうかな」でもいいし、「今日は本を読もう」でもいいし。入院したら「ちょっと健康を害しただけでここにいなけりゃならないんだ」となってしまう。だから、入院中は、何でもできるようになるために、ちょっと今、我慢しようって思いました。

 退院した後、同じ病気の方からたくさんお手紙をいただいたんですけど、皆さん素晴らしいです。「頑張ってくれとは言いません、今は我慢してください」って。病気の人に「頑張って」ってつい言っちゃうんですけど、みんなもう頑張ってるんですよね。

(取材:さえき文香/撮影:さとうわたる)

小堺 一機(こさかい かずき)

 1956年、千葉県生まれ。大学在学中の1977年にテレビ番組「ぎんざNOW!」(TBS系)の「素人コメディアン道場」で優勝し、芸能界入り。歌番組「ザ・トップテン」(日本テレビ系)の中継リポーターや「欽ちゃんのどこまでやるの!?」(テレビ朝日系)などで人気を獲得。関根勤とパーソナリティーを務めたTBSラジオの「コサキン」シリーズは、深夜番組にもかかわらず27年半続き、司会を務めるバラエティー番組「ライオンのごきげんよう」(フジテレビ)は前身番組の時代から実に約30年。毎年恒例の舞台「小堺クンのおすましでSHOW」は28年続いているなど、担当するものは"長寿"になることが多い。俳優としても活躍しており、無類の映画好き、洋服好きとしても知られる。「ごきげんよう」などレギュラー番組のほか、NHK大河ドラマ「八重の桜」に岩倉具視役で出演中。11月には新国立劇場で公演する舞台「ピグマリオン」への出演が決定している。

舞台「小堺クンのおすましでSHOW 28 ~イン・ザ・シェアハウス~」
(2013年9月6日~15日、東京グローブ座)

 小堺さんが構成・演出も手がける毎年恒例の舞台が今年も上演。28回目となる今回は、東京のどこかの街にある一軒家のシェアハウス「prim(プリム)」で繰り広げられるスケッチ・コメディー(寸劇)。メーキャップアーティスト、温泉ソムリエ、グルメ雑誌編集者、お笑い芸人、ダンサーなど、年齢も職業も違う男女7人が巻き起こす、さまざまな出来事を描きます。第二部の歌とトークによる「おすましバラエティーSHOW」にも期待です。チケットは5月31日、各プレイガイドにて発売開始。

出演:小堺一機/松尾伴内/川本成(あさりど)/堀口文宏(あさりど)/伽代子(欽ちゃん劇団)/大澤恵/大野朱美 ※敬称略

お問い合わせ:東京音協 電話 03-5774-3030
http://t-onkyo.co.jp/index.php/archives/13604

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