2013年07月18日 10:30 公開

冬生まれの子は病弱!? 誕生月と健康の関係―米研究

 誕生月によってその人の特徴が変わるのか―。星占いにも似た考え方だが、実際に研究者の間でも、冬生まれの子供は虚弱体質になりやすいとされている。米プリンストン大学保健福祉センターのJanet Currieセンター長(経済学教授)らが、7月8日発行の米医学誌「PNAS」(電子版)に発表した最新の研究結果によると、統計学的に辛うじて意味があるという程度なものの、その傾向があることが認められたという。

1930年代から知られていた冬生まれの虚弱体質

 同じ学年でも誕生月によって1年近くの差が生まれる。小中学生にとってその差は非常に大きく、体力や学力で影響が出ているようだ。このほかにも健康面で、12月生まれは注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されやすいこと(関連記事)、春生まれで拒食症リスクが高まること(「British Journal of Psychiatry」2011; 198: 404-405)、11~12月生まれで多発性硬化症になるリスクが高いこと(「BMJ」2010; 340: c1640)などが報告されている。

 冬生まれの子供が虚弱体質になりやすいというのは、1930年代から研究者の間で知られていたこと。研究結果を見ると、時代や国、調査対象の数によってばらつきはあるものの、そうした傾向が認められており、当時の研究者たちは何か季節性の要因があると考えていたようだ。

 ところが近年になって、白人以外の人種で、結婚しておらず、大学教育を受けていない女性は、そうでない女性と比べて健康や発育に問題がある子供を生む割合が高い傾向があり、さらに年の前半(1~6月)に妊娠する、つまり冬に出産する傾向があるという研究結果が報告された。これによって誕生月と体質の関係は、季節でなく母親自身に原因があると考えられるようになったという。

 そこでCurrieセンター長らは、母親からの影響を除くため、米国の同じ母親から生まれた子供だけで比べる方法を採用。1997~2006年のニュージャージ州、2004~2010年のペンシルベニア州、1994~2004年のニューヨーク市の全出生記録320万件から、同じ母親から生まれた兄弟姉妹64万7,050グループ(全143万5,213人)を選び出し、誕生月と体質の関係を検討した。

冬生まれの短い在胎期間が原因か

 すると、以前に報告されたような、母親の人種、結婚、教育レベル、妊娠中の喫煙などと誕生月との間に見られた関係は全てなくなったが、冬に生まれた子供はそうでない子供より在胎期間(おなかの中にいる期間)が短く、より早産の傾向が認められた。この傾向は妊娠した月(最終月経月)が5月の子供(2~3月生まれ)で最も顕著で、在胎期間は平均よりほぼ1週間短く、早産の傾向は13%も高かった。

 一方で、妊娠した月が1月から5月と進むにつれて在胎期間が少しずつ短くなっていったが、6月に突然、元に戻り、6~12月はどの月に妊娠しようが大きな差はなかった。早産児は何らかの健康上の問題を抱えることが多いことから、この短い在胎期間が、年の前半に妊娠し、冬に生まれた子供に虚弱体質が多い原因かもしれないとしている。

 逆に、6~8月に妊娠した母親は、妊娠中の体重増加が平均より高く、そうでない母親より、平均で8グラム重い子供を出産する傾向があるという。これが、子供の健康に直接結びつくかどうかは定かではないが、大きな赤ちゃんを産みたいなら夏に妊娠するのがベストのようだ。

インフルエンザが在胎期間を短縮の可能性

 さらにCurrie氏らは、なぜ1~5月にかけて妊娠期間が短くなるのか、その原因を探るために、米疾病対策センター(CDC)が管理する1997年以降のインフルエンザウイルス感染記録と照らし合わせたところ、在胎期間が短くなる時期がインフルエンザの患者が増える時期と一致することを見出した。

 例えば、2009年は当時"新型インフルエンザ"と呼ばれたインフルエンザA型(H1N1 2009)が大流行した年で、例年より2カ月早く感染者数のピークを迎えた。すると、その年の在胎期間の短縮も2カ月早く始まり、3月の妊娠ですでに1週間短縮、そこから6月の妊娠まで少しずつ本来の在胎期間に回復していった。この結果は、インフルエンザウイルスへの感染が在胎期間を短くし、生まれてくる子供の健康に季節的な変動を与えていた可能性を示している。

 実際には、妊娠期間の1週間程度の短縮が胎児に与える影響はほとんどないとはいわれているが、インフルエンザの流行が懸念される年には、それなりの対策を講じることも必要なのかもしれない。

(サイエンスライター・神無 久)

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