2013年08月02日 10:30 公開

注目される新出生前診断、受けるときには慎重に

重い決断を迫られることも

 妊婦の血液検査だけでダウン症など胎児の染色体異常が分かるという新しい出生前診断がわが国でも始まり、実施する医療機関が増えてきている。しかし、札幌医科大学医学部遺伝医学の櫻井晃洋教授は「検査の内容をよく理解した上で、慎重に考えてほしい」と注意を促している。この検査では診断を確定することはできない上に、最終的に"陽性"と判定された場合、重い決断を迫られることもあるようだ。

母体の年齢などで変わる陽性的中率

 この検査は、正式には「無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)」と呼ばれる。妊娠10週頃に母体の血液だけで胎児の染色体のうち13、18、21番の数の異常を検査できる。染色体の数が1つ多い「トリソミー」はこの3つがほとんどを占めており、21番のトリソミーはダウン症の原因となる。染色体異常の検査はこれまで、母体に針を刺して羊水を採る羊水穿刺(せんし)が必要で、低確率ではあるが流産の原因にもなっていた。

 「新しい出生前診断は99%以上の精度と報道されましたが、この数値がそのまま陽性の的中率を意味しているわけではなく、検査を受ける母親の年齢によって変わります」と櫻井教授は指摘する。

 「99%以上」という数値は、染色体異常が分かっている母親にこの検査を行ったときの結果であり、あくまでも研究で行った成果にすぎない。実際には、母体の年齢が高くなるほど胎児の染色体異常の確率が高まるので、母体の年齢が大きく影響してしまう。例えば、40歳の母体ではダウン症児が約100分の1の確率で生まれるため、陽性的中率(検査で異常と判定された人のうち実際に胎児が染色体異常を持つ確率)は約90%,妊婦の年齢が低いとこの陽性的中率はさらに低くなる。

 また、この検査で陽性だったときに診断を確定させるには、羊水穿刺が必要になることにも注意が必要だ。

障害の程度までは予測できない

 染色体異常が見つかったときには、妊娠の継続を諦めるかどうかの難しい決断を迫られる。染色体異常といっても、赤ちゃんの障害は軽いものから重いものまであり、今回の検査では障害の程度までは予測できない。また、赤ちゃんの約3%は先天異常を持って生まれてくるが、今回の検査はそのごく一部を判定するにすぎない。

 新しい出生前診断では、検査前に遺伝カウンセリングを行うことになっており、医療情報の提供だけでなく、心理的な支援もしてもらえる。しかし、陽性の場合には重い決断をしなければならないことには変わりなく、検査前にこのことを念頭に置いておく必要がある。

 遺伝子検査のことを知りたいならば、櫻井教授の著書「そうなんだ! 遺伝子検査と病気の疑問」を勧めたい。

(編集部)

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