2013年08月06日 06:00 公開

プール後に目を洗うのはNG?

 小中学生の頃、プールの後に目を水で洗っていましたが、最近、子供から洗わないと聞きました。プールの後に目を洗うのはいけない行為だったのでしょうか。  やまめ(女性40代)

日本眼科医会は、プール後の水道水による洗眼を積極的には勧めていません。

 以前は、プールで泳いだ後に目を洗うことが常識とされており、必死に目を洗った記憶をお持ちの方も少なくないでしょう。しかし、2008年に慶応大学の眼科グループが「プールと同じ濃度の塩素を加えた生理食塩水で洗眼すると塩素によって角結膜の上皮が傷つく。水道水による洗眼でも、目の表面を保護しているムチン(粘膜を保護する成分)が減少し、角膜上皮のバリア機能が障害された」という論文を発表しました。

 今までの常識を覆す内容のため、マスコミにも取り上げられ、学校保健法ではプール後の洗眼を指導するように記載されていることから、学校は混乱して大変でした。

 そこで、2008年8月に日本眼科医会が「プールにはゴーグル使用が望ましい。またプール後の水道水による簡単な洗眼は行ってよいが、積極的に推奨するものではない。なお、児童生徒の体質によっては、学校医の指導のもと、プール後に防腐剤無添加の人工涙液の点眼や、簡単に水道水で目の周りを洗うなどの対応も必要」との見解を出しています。

 慶応の論文では、目の表面の細胞に対する影響を確認するため50秒もの長い時間洗眼をしていますが、通常の洗眼時間は長くても10秒くらいです。洗眼による目の表面に付いた細菌やウイルスなどを洗い流す効果を否定する資料はなく、5~10秒程度の洗眼は有用と考えられています。そのため、水道水での洗眼は積極的に勧めないものの簡単な洗眼は行ってよいとの見解です。

 まばたきによって涙腺から涙が分泌されるため、時間がたてば目の違和感は軽減してきます。涙には、目の表面を潤して乾燥を防ぐだけでなく、目に酸素や栄養分を補給したり、目に付いたゴミなどを洗い流したり、ウイルスや細菌を殺菌・除去したり、異物の侵入から目を守ったりするという重要な働きがあるのです。

 ゴーグルを着用しないで泳いだ後、何時間も目の違和感が続く場合は、涙液と同じ濃度で防腐剤を含まない目薬を使用するのがよいとしています。防腐剤を含まない目薬を選ぶことは重要ですが、使用期限が10日以内と短いので、目薬の管理には十分気をつけてください。

 このように研究が進むことで、今までの「常識」が180度覆される場合もあるのですね。

中野 里美(なかの さとみ)

 1990年、東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。都立広尾病院、国立病院機構栃木病院などを経て、2007年から三菱UFJニコス株式会社診療所勤務。同社において初代統括産業医として、社員の健康管理を行っている。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント。

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