2013年09月12日 06:00 公開

口腔カンジダ症は予防できる?

<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 

〔症例〕 60代 男性
〔症状〕 唇の端に亀裂と炎症ができてヒリヒリしています。何度も再発するため、病院へ行くと「カンジダ性口角炎」と診断されました。治療後に再発しないか心配なのですが、口腔(こうくう)カンジダ症の予防策はありますか。

原因を取り除くことで予防できます。

 カンジダ性口角炎は、口角(=唇の両端にある溝)から唾液が漏れて、皮膚や粘膜が湿って軟らかくなると生じやすくなります。長年使用している義歯では、かみ合わせが低くなり、口角の皮膚が折れこんで唾液がたまるため、発症しやすくなります。この場合、義歯を調整するか新しく作り直して、かみ合わせの高さを維持することで予防できます(関連記事)。 

病気の治療、ミネラルやビタミンの補充

 「鉄欠乏性貧血」「亜鉛欠乏症」「ビタミン(B2、B6、B12)欠乏症」や、免疫力が低下する「糖尿病」「肝臓病」「エイズ」などは、バリアーとなる皮膚や粘膜が弱くなるため、口腔カンジダ症が生じやすくなります。抗真菌薬を服用して症状が治まっても、これらの病気が原因で生じた場合、再発を繰り返します。 

 例えば、鉄欠乏性貧血の合併症「プラマービンソン症候群」では口内炎や口角炎、亜鉛欠乏症では口内炎が起こりやすく、カンジダ菌が患部から簡単に侵入できるため、口腔カンジダ症になりやすいのです。また、胃を全摘出した患者に、ビタミンB12欠乏症が起こり、口の中の粘膜が弱くなってカンジダ性口角炎が反復した例もあります【図】。

 
【図】カンジダ性口角炎
左:検査からカンジダ菌が検出し、ビタミンB12欠乏症と判明
右:補充療法により口角炎が治癒。ビタミンB12欠乏症改善以降、再発していない 

 このように、糖尿病などの内科の病気を適切に治療することや、食事による鉄分、亜鉛などのミネラルやビタミンの補充をして口の中の粘膜を強くすることは、口腔カンジダ症の予防につながります。 

口の中の掃除と保湿 

 口腔カンジダ症の原因を取り除くためには、口の中の掃除(口腔清掃)が欠かせません。口の中の衛生状態を保つことがとても重要です。口腔清掃は消毒ではないため、口の皮膚や粘膜を保護する常在細菌叢(健康な体にも存在する菌)を守るためにも、抗生物質、ヨード、アルコールなどを含むうがい薬を長期的に使用してはいけません。 

 唾液にも重要な役割があり、唾液に含まれるネバネバする成分「ムチン」は、食べ物や歯などが口の中の粘膜を傷つけないように保護し、唾液の酵素「リゾチーム」「ラクトフェリン」「ラクトペルオキシダーゼ」は侵入した細菌をやっつけます。さらに、唾液を多量に分泌することで侵入してきた細菌や異物を洗い流して口の中を守る役割があります(自浄作用)。 

 口腔カンジダ症の予防には、唾液の分泌を促進して口の中の乾燥を防ぎ、唾液の自浄作用を高めることが重要です。常在細菌叢を保ちながら口腔清掃をするため、唾液抗菌酵素を配合する口腔化粧品も有効です。 

【参考文献】
1)西山茂雄. 口腔粘膜疾患アトラス, 文光堂, 1998, pp66-67.
2)上川善昭. 総説 口腔ケアに必要な口腔カンジダ症の基礎知識-診断・治療と口腔ケアによる口腔カンジダ症の予防. 口腔ケア学会雑誌 2010; 4: 17-23.
3) 上川善昭, 他. 総説 口腔カンジダ症 口腔感染症のUpdate. 季刊歯科医療, 2010; 24: 24-30.
4)上川善昭, 他. 口腔カンジダ症の基礎と臨床. 難病と在宅ケア, 2009; 15: 62-66.
5)上川善昭, 他. 義歯床材料表面における口腔化粧品(オーラルバランス®ジェル)の抗真菌効果. 歯科薬物療法雑誌2012; 31: 1-12.

<鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 顎顔面疾患制御学分野 教授 杉原一正>

指導・監修

上川 善昭(かわかみ よしあき)

上川 善昭(かわかみ よしあき)
鹿児島大学 医学部・歯学部附属病院 診療講師 口腔外科

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