2013年09月19日 10:30 公開

"無煙社会"実現したインド活動家が日本に助言

学会は東京五輪までの都内禁煙化を訴える

Goswami氏(左)と同学会の薗潤代表理事(中央)、<br />
金子副代表理事
Goswami氏(左)と同学会の薗潤代表理事(中央)、
金子副代表理事

 喫煙を規制するのではなく、たばこそのものが存在しない"無煙社会""たばこフリー社会"の実現に向けた研究や活動を行う日本タバコフリー学会。その第2回学術大会(9月15~16日、東京都)で、インド北部チャンディガール市を無煙社会に導いた社会運動家で、非政府組織(NGO)「Burning Brain Society」理事長のHemant Goswami氏が講演し、草の根運動による無煙社会の実現のポイントを紹介。"禁煙後進国"とされる日本へ助言した。また、今回の学術大会で大会長を務めた同学会の金子昌弘副代表理事は、2020年の東京五輪までに都内禁煙化を実現するよう訴えた。

たばこ規制法適用できないなら別の法律で規制

 Goswami氏が、インドの都市として初となる無煙社会を実現させたのは2007年のこと。03年に行政はたばこ規制法の公布に踏み切ったものの、法的な拘束力が弱く、07年にまでに同規制法による立件はゼロだったという。

 こうした実態を振り返り、同氏は「喫煙問題は医学的でもなければ社会的なものでもなく、政治的なものである」と断言。「他の公衆衛生上の問題と異なり、政治的な筋書きがあって第三者による介入が存在する」とたばこ産業の干渉を問題視し、「政治的問題に対しては、政治的解決が必要」との考えに至った。

 そこで同氏は、法律面からのアプローチとして、たばこ規制法が適用されないような事例に対し、日本でいう食品安全基本法や大気汚染防止法のような既存の法律と照らし合わせ、ニコチンなどの有害物質が人々の体内に取り込まれたり、空気を汚したりすることの違法性を主張した。つまり、たばこ規制法で規制できないものは、他の法律の力で規制したというわけだ。

硬軟織り交ぜた方策が必要

 ただし、法律を前面に押し出した"攻撃的手段"が必ずしも得策というわけではないようで、同氏は「攻撃的なアプローチはとても有用だが、同時に各団体や組織との協力関係を築き、友好関係を作ることも重要であり、硬軟織り交ぜた方策こそ必要」と説いている。

 実際に同氏らは、若者や他の市民団体、宗教団体、商業団体やサービス業界、マスメディアなど、地域で異なる役割を担う組織に近づき、教育や啓発、情報発信などを通じて連携を深めていった。また、行政との関係では、健康部門よりも法律部門との連携により重点を置き、禁煙化への関心を持ってもらえるよう啓発したという。

 こうした同氏の功績は世界的にも高く評価され、2008年に米国がん協会(ACS)による「Global Smoke-Free Partnership」賞および「Extraordinary Activist」賞を受賞。今年5月31日の世界禁煙デーには、世界保健機関(WHO)の「世界禁煙デー」賞も受賞した。

世界のアスリートや観客に恥ずかしくない都市へ

 Goswami氏の講演を受けて金子副代表理事は、以下のコメントを寄せた。

 「われわれはつい、全国的に法律を変えるという大きな視点から始めようとしてしまいがちで、例えば一つの県の一つの市町村レベルから全面禁煙化に踏み切ることで、その境界に住んでいる人が喫煙可能な飲食店に流れていってしまうのではないかと考えてしまっていた。しかし、禁煙化されたきれいな空間で食事ができることをアピールすれば、逆にそちらの集客率が上がるかもしれない。つまり、喫煙者に対する教育ばかりではなく、喫煙問題に無関心な非喫煙者への教育も重要であると気付かされた。2020年の夏季オリンピックでは、招致を競い合ったトルコ・イスタンブールやスペイン・マドリードのような禁煙化が進んだ都市ではなく、東京が選出された。世界から集まるアスリートや観客などにも恥ずかしくない都市を目指し、少なくとも東京だけはそれまでに禁煙化すべく、われわれも活動を強化していきたい」

 なお、Goswami氏は日本について、啓発活動は市などの小規模な自治体レベルから広めていき、協力関係については幅広い分野を対象に可能性を探った上で、適切な法整備や施行手順、施行部門の担当者への適切な教育などの条件が満たされれば、早くて6カ月以内に無煙社会の実現は可能としている。

(編集部)

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