2013年10月30日 10:30 公開

医療関係者でも誤解、妊娠中に胎児へうつる2つの感染症

トキソプラズマとサイトメガロウイルス―患者会が訴え

 妊娠中はさまざまな感染症に気をつけなければならないが、その中でも母子感染で子供に重大な障害が残ることがあるのが、先天性トキソプラズマ症先天性サイトメガロウイルス症だ。両感染症に悩む患者や家族の団体「トーチの会」は、10月26~27日に札幌市内で開かれた第45回日本小児感染症学会のシンポジウムで、これら2つの感染症について「医療関係者でも感染経路などについて誤解がある」とし、正しく理解した上で患者を指導するよう求めた。

無症候や軽い症状が多く見過ごされがちに

 先天性トキソプラズマ症の原因となるトキソプラズマは、ネコ科動物の糞や家畜の肉、土中などに潜む原虫で、口から感染すること(経口感染)が多い。世界で30%以上の人が感染しているとの試算もあるが、成人感染では無症候か軽い風邪の症状で終わることが大半だ。

 先天性サイトメガロウイルス症の原因となるサイトメガロウイルスも日常生活で接することは珍しくなく、母乳や唾液、尿、性行為などで感染する。日本では成人の半数以上が免疫を持っているとされ、健康であれば感染しても特に問題は起きない。

 ところが、いずれも妊婦が初めて感染した場合は深刻な問題につながる恐れがある。妊娠時期で異なるがトキソプラズマは10~70%、サイトメガロウイルスは30~50%の割合で胎児に感染するとされ、最悪の場合は流産や死産になったり、脳に障害が残ったりする。出生時に問題がなくても、子供が成長するにつれて視力や聴力に何らかの障害が現れてくるケースもある。

"極めてまれ"だった先天性トキソプラズマ症

 現在はこれらの問題が明らかになってきたが、1985年の全国調査で先天性トキソプラズマ症が「極めてまれなケース」と指摘されたことから、長らく重要視されてこなかった。歯科医でトーチの会代表の渡邊智美氏は、妊娠中にトキソプラズマに感染した体験を交えながら、母子感染症対策の問題点を説明した。

 渡邊氏は、妊娠30週頃に近所の医療機関で受けた妊婦健診で胎児の「両側脳室拡大」が認められたが、健診にトキソプラズマに感染しているかどうかを検査する項目がないことから、原因が特定されないまま周産期医療センターへ転院となった。そこで行われた妊娠36週目の血液検査で、胎児の先天性トキソプラズマ感染症が判明。胎児の症状悪化を予防するために分娩(ぶんべん)まで薬(スピラマイシン)の服用を続け、妊娠38週5日に帝王切開で出産したという。

感染経路を風疹のように誤解

 同会北海道支部長の吉田美知代氏も、妊娠27週頃から胎児の発育不全が認められたが、生後1カ月まで先天性サイトメガロウイルス症と分からなかった経験を告白。サイトメガロウイルスは空気や飛沫(ひまつ=せきやくしゃみなどによって飛散する体液の粒子)では感染しないにもかかわらず、医師から他の妊婦がいる場所へは近づかないよう指導され、子供が1歳になるまでほとんど外出を控える生活を強いられたという。

 吉田氏は「医療関係者でもサイトメガロウイルスに対し、風疹のような飛沫感染があると誤解があった。正しく指導することが当たり前なのに、それができていなかった」と嘆いた。

 渡邊氏は、妊婦の啓発用パンフレットなどにトキソプラズマやサイトメガロウイルスの母子感染に関する記述がないことに触れ、「感染の可能性が高く重い障害が残る恐れがあるにもかかわらず、正しい知識を得る機会がない」と訴えた。

 また、過去の全国調査結果を根拠にこれらの先天性感染症に無頓着な医療関係者が少なくないと指摘し、妊婦や妊娠希望者などへの抗体検査や感染児の障害に対する早期発見・治療などを充実させる対応策を提案。同会の活動にも触れ、公式サイトで母子感染予防パンフレットが無料でダウンロードできることなども紹介した。

 最後に「最も簡単で安価であり、効果が期待できる母子感染症の予防対策は啓発・教育」と述べ、医療現場の協力を求めた。

(編集部)

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