2013年10月31日 06:00 公開

顎の骨の中に埋まった歯の炎症、手術費用は?

<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 

〔症例〕 40代 男性
〔症状〕 奥歯(左下)が痛くなり、頬と顎が腫れて歯医者へ行きました。レントゲン写真を撮影して処置した結果、担当医から「歯茎の下に歯が一本埋まった状態。神経を圧迫し、腫れを起こしている。大きい病院を紹介するので、手術で抜いた方がいい」と言われました。今も顎に痛みと腫れ、下唇のしびれが残っています。手術する場合の費用、入院の必要があれば入院日数を教えてください。

炎症の大きさで手術費用が変わり、入院する場合は3~10日です。 

 奥歯(下顎臼歯部)の痛み、頬と顎の腫れとする初発症状、および、下唇のしびれ(知覚麻痺=まひ=)、さらに、レントゲン写真から、下顎の骨の中に埋まっている歯(埋伏歯)があり、その周囲に炎症が生じていると思われます。 

 「腫れを起こしている」「抜いた方がいい」という説明から、智歯(親知らず)周囲炎も完全には否定できません。しかし、レントゲン所見から下顎の骨の中を走っている神経(下歯槽神経)の近くに埋伏歯があり、歯茎の症状がないようなので、単なる埋伏智歯(骨に埋まった親知らず)が原因の炎症(智歯周囲炎)ではなく、「含歯性嚢胞(のうほう)」と診断している可能性が高いと考えます。 

 含歯性嚢胞は、埋伏歯の歯冠(歯の頭の部分)を含んで作られる袋状の病気です。レントゲン写真では、歯冠を含んだ類円形で、骨との境ははっきりとした(境界明瞭)黒い影(透過像)として見えます。また、歯を作る組織から生じる良性腫瘍の「エナメル上皮腫」も含歯性嚢胞に類似した症状やレントゲン写真を示すことがあり、十分な注意が必要です。 

 気がかりな点は、下唇に知覚麻痺を起こしていることです。含歯性嚢胞とエナメル上皮腫はいずれもこの症状が出ますが、エナメル上皮腫の方が知覚麻痺を起こしやすいとされます。 

 治療としては、両者ともに手術しかありません。含歯性嚢胞では抜歯を伴う摘出術を、エナメル上皮腫では小さい場合には摘出して周囲の骨を削除するか、周囲の骨ごと切除します。 

 手術費用は手術料、麻酔料および入院期間により差が生じます。「顎骨腫瘍摘出術」の手術料は病変の大きさにより差があり、長径3センチ未満で2万8,200円、3センチ以上で11万1,600円となります。これらに入院費などを含めて3割負担で概算してみると、病変が小さければ気分をリラックスする方法(静脈内鎮静)での局所麻酔で手術し、3~4日間の入院で3~4万円程度、7日間の入院で5万円程度です。入院期間は顎骨の中での病変の深さや大きさによって変わります。 

 また、病変が大きかったり、病変が小さくても口が開きにくかったり、手術に対する恐怖心が強かったりする場合は全身麻酔下で手術することが多く、入院期間は7~10日程度。3割負担での費用は、病変が小さな場合で8~9万円程度、大きな場合で12万円程度となります。

指導・監修

坂下 英明(さかした ひであき)

坂下 英明(さかした ひであき)
明海大学 歯学部歯学科病態診断治療学講座口腔顎顔面外科学教授

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