2014年04月07日 10:30 公開

投手へのトミー・ジョン手術、成績向上も現役生活は短く

米学会で報告

投手は肘に負担がかかりやすい
投手は肘に負担がかかりやすい

 1974年に米医師フランク・ジョーブ博士によって考案され、これまで多くの投手をマウンドに復帰させてきたトミー・ジョン手術(肘内側側副靱帯=じんたい=再建術)。肘の靱帯を断裂してしまった投手にとって頼みの綱で、日本の野球界でもこの手術を受けている選手は多い。では実際に、この手術を受けた投手はどの程度の割合で復帰し、活躍しているのか―。米ラッシュ大学医療センターのAnil K. Gupta氏らは、米大リーグでの状況を調査し、その結果を3月15日に米ニューオーリンズで開かれた米国スポーツ医学整形外科学会で報告した。防御率の向上など成績が上がっていたが、一方で現役生活は短い傾向にあったという。詳細は、米医学誌「American Journal of Sports Medicine」3月号(2014; 42: 536-543)に掲載されている。

防御率や敗戦数などが改善

 Gupta氏らは、1986~2012年にトミー・ジョン手術を受けた大リーグの投手179人について検討した。83%(148人)が大リーグ、マイナーリーグも含めると97%(174人)が復帰し、5人が引退をしていた。

 復帰までの期間は平均20.5カ月。2年近くの長期間を要することが分かった。また、復帰後の大リーグでの現役生活は平均3.9年と短かった。なお、昨季(2013-14年)開幕時に56人が現役だった。

 一方で、手術の前に落ち込んでいた成績が、トミー・ジョン手術によって向上することも示された。例えば、年間防御率は平均で5.67から4.18に改善。年間敗戦数も平均4.4敗から3.1敗に減った。また、WHIP(投球回当たりの与四球+被安打)も平均1.60から1.39に改善した。

投球回数や勝利数は術前より減少

 しかし、Gupta氏は「術後に改善された数値には注意をしなければならない。投球回数や勝利数が減った投手もおり、トミー・ジョン手術をパフォーマンス向上のための選択肢とすべきではない」とコメントしている。

 実際、術前と術後で年間投球回数は平均77.4回から58.7回、年間勝利数も平均4.46勝から3.33勝に低下。与四球や被安打、被本塁打、自責点などは数が減ったものの、投球回数に対する割合で見ると術前・術後で差が見られなくなった。

 こうしたことから、Gupta氏は「トミー・ジョン手術を受けた後、投手の役割や投球スタイルが変化していることを知るのはもちろん、高校や大学も含む全ての野球選手はこの手術ついて学び、知識を深めておく必要がある」と主張した。

 ジョーブ博士は今年(2014年)3月6日に死去したが(享年88)、トミー・ジョン手術を受ける投手は年々増えており、治療選択肢としてなくてはならないものとなっている。

(編集部)

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