2014年04月23日 10:30 公開

がんになっても定期的な運動は必要! 手軽な実践法を紹介

日本臨床腫瘍薬学会の市民公開講座より

 がんを克服する人や治療を続けながら長く生きる人が増えている中、日本臨床腫瘍薬学会は3月22日、こうした"がんサバイバー(生存者)"に向けた市民公開講座「がんサバイバーシッププログラム―がん患者の笑顔のためにできること―」を開催し、乳がんサバイバーの広瀬眞奈美さんが「運動との上手な付き合い方」と題する講演を行った。広瀬さんは、「がんになったら運動してはいけないの?」という素朴な疑問から出発し、今はがんサバイバーに運動などを指導する団体「Moving for Life Japan」の代表を務めている。がん患者でも運動は重要であることと、その手軽な実践法を紹介した講演をレポートする。

がんになっても普通の運動量を保つことが大事

 広瀬さんは、発症から5年目を迎えた乳がんサバイバー。抗がん薬、放射線、手術の三大治療を受け、強烈な痛みやしびれといった、"まさかの後遺症""まさかの副作用"を一通り体験する。とにかく元に戻りたい一心で、「体を活性化させて元気にするには、運動しかない」と考えた。

 しかし、周囲からは「がんなんだから、おとなしくしている方がいいんじゃない?」との声。そこで、がん患者の生活や運動についての本を探すが、当時はなかなか見つからず、仕方なく英語の本や海外のウェブサイトを訳しながら読んでいた。その中で、米国対がん協会の『がん生存者のための食事と運動のガイドライン』は非常に役立ったという。なお、このガイドライン(指針)は『「がん」になってからの食事と運動』として昨年、翻訳書が発行された。

 このガイドラインには、まず「健康的な体重を維持しよう」とある。体重(キロ)÷身長(メートル)の2乗で算出されるBMI(肥満指数)は21を目安としており、肥満に分類される25以上は要注意で、反対に痩せ形(低体重)の18以下も好ましくないと書かれている。
※BMI計算はリンク先の本文中より実施できます。

 次に、「定期的に運動しよう」と明言されている。なぜなら、がん患者は告知を受けた途端、生活が守りに入って運動不足になり、体のいろいろな部位が弱くなってしまうからだ。そのため、診断後もできるだけ普段の生活を続け、なるべく普通の運動量を保つことが大事とされている。

がんサバイバーの栄養と運動に関するポイント(米国対がん協会のガイドラインより)

  1. 健康的な体重を達成し維持しましょう
  2. 定期的に運動しましょう
    • 運動不足を避け、診断後もなるべく早く通常生活に戻るようにしましょう
    • 1週間に150分以上運動することを目標としましょう
    • 1週間のうち2日以上は筋肉トレーニングを運動に含めましょう
  3. 野菜、果物や全粒穀物が多い食物パターンにしましょう

必要なのは有酸素運動、筋力トレ、ストレッチそして休息

 具体的には、「1週間に150分以上の運動」が目標となる。しかし、苦手な人にとって運動はとても面倒くさいもの。広瀬さんは、毎日の買い物や通勤を、例えば運動靴に履き替えて早歩きする、エスカレーターの代わりに階段を使うといった工夫で、運動の時間に変えることを勧める。あるいは、毎朝、アップテンポな音楽をかけ、太ももを上げる体操をするだけで良い有酸素運動になるという。

 1週間に2日以上の筋肉トレーニングも重要だ。筋トレというと「ジムなんかに行けない」と考えてしまいがちだが、実は家で簡単にできるのだ。日常動作の基盤となる筋肉は胸、背中、足。この部位の筋肉はしっかり鍛えてほしいという。

 例えば、本などを使った上り下り運動を1日10分間行うだけでよい。テレビを見ながらの腹筋や背筋の運動、手を挙げ横にひねっておなかの力で戻すだけでも、十分な筋トレになる。がんの手術を受けた後ならば、ゴムベルトを使って軽い負荷をかけた運動がよい。ジムに行くのはその後だ。

 ストレッチも重要となる。ストレッチをしないと体はどんどん固くなり、姿勢が悪くなってしまうからだ。そして、無理はしないこと。疲れたらしっかり睡眠を取ることを忘れないでほしいと、広瀬さんは強調する。

 このように、運動の大切さはがんになったからといって、普通の人と何も変わらない。

運動は体だけでなく心にもよい影響を与える

 広瀬さんは「"がんサバイバーがより良く生きる"とは、結局は生活の質を高めることであり、そのために必須なのが栄養と運動です」と語る。がんになると、病気や治療によって貧血や低栄養、疼痛(とうつう=痛み)といったさまざまな問題が起こってくる。睡眠障害、不安、うつも珍しくなく、それらががん患者特有の強い疲労感を生み出す。この疲労感ががん患者を運動から遠ざけ、筋力や健康状態の低下を招くと同時に、心にも悪影響を及ぼしてしまうのだ。

 では、なぜ運動が大事なのか。体の機能や日常の動作を維持するという体への効果とともに、感情、疲労感、自信・自尊心など精神面にも良い影響があるからだ。がん患者には、常に再発の恐怖がつきまとう。体力があって精神力が強ければ、仮に再発しても何とかやっていけるのではないか。そう思えるよう自分を変えることにも運動は役立つという。

 広瀬さんは最後に、自身が考案したリハビリのためのエクササイズを紹介。講演の演者や会場の参加者とともに、音楽に合わせて実演した。広瀬さんは「運動をしたいと思ったら、グループを作って声をかけてください。どこにでも行きます」と話している。

(編集部)

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