2014年05月21日 10:30 公開

運動のし過ぎは逆効果、心臓病の危険性高まる―欧州2研究

 病気の予防には運動と食事が重要。でも、運動のし過ぎはかえって病気を招いてしまうかもしれない。5月14日発行の英医学誌「Heart」(電子版)に発表されたスウェーデンの研究によると、30歳のときに週5時間を超える運動習慣があった人で、後に心臓病になる危険性が上がったという。また、同時掲載されたドイツの研究では、毎日運動している心臓病患者は、全く運動をしない人に次いで心臓病で死亡する危険性が高まっていたとしている。2つの論文を評論したスペイン・バルセロナ大学のEduard Guasch氏らは、結果の重要性に言及しつつ、「運動によって健康的な効果が得られるのは疑いようのない事実」と述べている。

高齢になって運動やめた人でリスク5割増

 スウェーデン・カロリンスカ大学病院のNikola Drca氏らの研究では、同国の45~79歳の一般男性4万4,410人を1997年から12年ほど追跡調査し、15歳、30歳、50歳、研究開始の各時点での毎日の移動手段や余暇の運動時間と、心房細動(不整脈の一種)との関係を調べた。

 その結果、30歳のときに余暇の運動(ランニング、サッカー、サイクリング、水泳、体操、クロスカントリースキーなど)が週5時間を超えていたグループでは、週1時間未満のグループに比べて心房細動になる危険性が17%高まっていた。研究開始の時点ですでに心臓病にかかっていた人を除くと、リスクは19%増とさらに上昇していた。

 また、中でも研究開始の時点で運動をしなくなっていた人(週1時間未満)は、心房細動になる危険性が49%増まで上がっていたが、研究開始の時点でも週5時間を超えて運動していた人では、心房細動リスクの上昇は見られなかったという。

高齢者の運動は好影響が悪影響を上回る可能性

 さらに、研究開始の時点で徒歩や自転車での移動時間が1日1時間を超えているグループでは、徒歩や時点での移動がほとんどないグループに比べて心房細動になる危険性が13%下がっていた。なお、15歳と50歳の時点での運動や徒歩・自転車による移動は、心房細動との関連が認められなかったとしている。

 この研究結果をまとめると、30歳の時点で強い運動を多く行うと後に心臓へ悪影響を及ぼすこと、高齢になってから軽い運動を毎日することで心臓病になる危険性を下げることが示唆されたことになる。これは、50歳未満の男性で強い運動を週5~7日行う人で心房細動を起こす危険性が74%上がるとする、これまでの研究結果と一致するという。

 Drca氏らは、運動と心房細動の関連について「運動は高血圧や糖尿病、肥満などの心臓病につながる要因に良い影響を与える一方、強度が強いと(血液を全身に送る)左心房の肥大などをもたらし、心房細動になる危険性を高めることも知られている」と説明した上で、「高齢になってからの運動は、好影響が悪影響を上回る可能性がある」と考察している。

「毎日運動」で心血管病での死亡リスクが2.4倍に

 一方、ドイツ・がん研究センターのUte Mons氏らによる研究では、同国の症状が落ち着いている心臓病(冠動脈性心疾患=心筋梗塞や狭心症など)患者1,038人について、中央値で8年ほど追跡調査した。

 その結果、退院後の余暇の運動(サイクリング、ハイキング、汗をかく程度のスポーツなど)が週2~4回の人を基準とした場合、退院後1年で運動をほとんどしなかった人は、心血管病が悪化する危険性が2.0倍、死亡する危険性が3.5倍、心血管病で死亡する危険性が3.8倍となっていた。これは、運動不足が心臓や血管に悪影響を及ぼすというこれまでの研究結果と一致する。

 ところが、運動を週7回する人でも、心血管病が悪化する危険性が1.5倍、死亡する危険性が1.7倍、心血管病によって死亡する危険性が2.4倍に上昇。週5~6回の人でもリスクが上がっていた(それぞれ1.2倍、1.7倍、1.2倍)。

 Mons氏らは「予測通り、運動量が最も少ない患者で見通しが最も悪かった。しかし、運動の頻度が最も多い患者でもある程度、危険性が上がっており、運動と心血管病の間にU字の関連があることが示唆された」と結論している。

運動不足にならないで!

 これら2件の研究について、スペイン・バルセロナ大学病院のEduard Guasch氏らは、同誌の付随論評(電子版)で「重要な結論が導き出された」と評価。その上で「運動の効果に限界があることについて、社会に向けて知らせる必要はある。ただし、不要な警戒心を引き起こし、運動不足や心臓病の増加を招くことのないよう、正確な情報提供が重要」と指摘し、「運動で健康に良い効果が得られることは疑いようのない事実であり、むしろ強化すべき」と強調している。

 また、「今後の研究によって、薬など他の治療法の研究と同じく、有害な作用を避けて最大の効果を得るための運動のしかたが明らかにされていくだろう」と期待を寄せている。

(編集部)

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