2014年05月26日 10:30 公開

イヌが前立腺がんを嗅ぎ分ける! 精度は"ほぼ完璧"

イタリア研究

前立腺がんを嗅ぎ分けるLiu、Zoeyと同犬種のジャーマン・シェパード・ドッグ
前立腺がんを嗅ぎ分けるLiu、Zoeyと同犬種のジャーマン・シェパード・ドッグ

 イタリア・フマニタス研究病院のGianluigi Taverna氏らは、特別な訓練を施した2匹のイヌに前立腺がんの患者とそうでない人の尿を嗅ぎ分けさせたところ、100%に近い精度で前立腺がんが当てられたと、5月16~21日に開かれた米国泌尿器科学会の会合(AUA 2014、米フロリダ州オーランド)で報告した。ただし、実用化には越えなければならない多くの壁があるようだ。

900人の尿サンプルで検討

 イヌの嗅覚は人間の数千~数万倍ともいわれ、その能力は麻薬探知犬や爆発物探知犬としても生かされており、医学分野でも人間の尿に含まれている物質を嗅ぎ分けることで、さまざまながんを発見できるとする研究結果が報告されている。

 前立腺がんに関しても、2010年にフランスの研究グループが発表した研究で、100%に近い判別結果が得られているものの、研究に使われた尿のサンプルは66点と少なかった。

 今回の研究では、902点の尿サンプル(前立腺がん患者362点、前立腺がんでない人540点)が使われた。患者グループでは進行度や病気の期間などがさまざまで、前立腺がんでないグループは女性や他のがん患者、前立腺肥大症患者が含まれていた。さらに、患者グループもそうでないグループも、ともに年齢や病歴、飲酒、喫煙などもバラバラだったという。

 イヌは2匹とも、イタリア軍で爆発物探知作業に従事する3歳の雌シェパード(名前はLiuとZoey)で、研究のために前立腺がんを検出できるよう訓練された。

年齢や性別、がんの悪性度など関係なし

 実験の結果、前立腺がん検出の精度は、Liuが感度(前立腺がん患者を正しく判定する割合)100%、特異度(前立腺がんでない人を正しく判定する割合)98.7%、Zoeyが感度98.6%、特異度97.6%だった。

 前立腺がんでないグループを男性に限定しても結果はほとんど変わらず、患者の年齢や進行度、悪性度、転移しているかどうかなども関連していなかった。これは、Liuらが嗅ぎ分けている尿に含まれる物質が、がんの悪性度や大きさなどと関係ないか、その物質がごく微量でも嗅ぎ分けられることを示唆しているという。

 Taverna氏は「高度な訓練を受けたイヌは、前立腺がん患者の尿検体を100%に近い精度で嗅ぎ分けられることが分かった。また、その能力とがんの悪性度などとの間に関連はみられなかった」と結果をまとめ、「この能力を利用して不要な生検(患部の一部を切り取り、顕微鏡などで調べる検査)を減らし、危険性の高い患者を絞り込むことが将来、可能になるかもしれない」と付け加えた。

実用化には多くの優秀な探知犬をそろえることが必要

 ただし、Taverna氏は、今回の研究結果を実際に応用できるようになるには、まだまだ不明な点が多いと指摘している。

 日常的に検査を行うには、多数のイヌを訓練し、優秀な探知犬を各施設に配備しなければならない。また、今回は6カ月を要したという訓練期間や検査体制に必要な費用、さまざまな場面で安定して精度の高い嗅ぎ分けを行えるかも不明で、イヌの判定をもとに生検や手術に進んでよいのかという倫理的な問題もあるという。

 一方で、嗅ぎ分けている物質を機械で分析する方法が研究されているものの、イヌがどの物質に反応しているのかを特定しなければならない。これは大変に難しく、現時点では解明が進んでいない。いずれにしても、今回の知見が具体的に活用できるようになるのはまだまだ先のようだ。

(編集部)

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