2014年06月03日 14:00 公開

音楽家に多いジストニア、音大生対象に実態調査―大阪大

シューマンも疑われた“難病”…練習重ねることで症状悪化

音楽家のジストニアは他の職業性ジストニアと異なるという(写真はイメージ)
音楽家のジストニアは他の職業性ジストニアと異なるという(写真はイメージ)

 ロマン派を代表するドイツの作曲家、ロベルト・シューマンが、ピアニストの夢を断念した原因といわれるジストニア。しかし、シューマンの時代から200年がたとうとしている現在も、この"難病"には不明な点が多い。大阪大学医学部神経内科脳卒中科の小仲邦氏と望月秀樹氏は、音楽大学の現役学生580人にアンケートを行った結果、ジストニアについて知っていると回答したのは3割にとどまったと、5月21〜24日に福岡県で開かれた日本神経学会の会合で報告した。小仲氏らは、音大生にこの病気の存在を知らせ、練習をさらに重ねることで症状を悪化させないようにすべきと強調している。

コブクロや米米、氣志團のメンバーも

 ジストニアは、本人の意思に反して筋肉が縮こまったりこわばったりする病気。同じ動きを繰り返す職業などの人がかかる場合を職業性ジストニアと呼び、音楽家がなる奏楽手痙(けい)のほか、作家や速記者などがなる書痙、ゴルファーなどスポーツ選手がなるイップスなどが代表的だ。

 職業としては、塗装工、プログラマー、理容・美容師なども挙げられるが、反復する動作を幼い頃から始める音楽家は、他の職業とは異なると小仲氏らは指摘する。音楽家のジストニアは、最近ではフォークデュオ「コブクロ」の小渕健太郎さん、音楽グループ「米米CLUB」の金子隆博さん、ロックバンド「氣志團」の白鳥雪之丞さんらが闘病を公表。命に関わる病気ではないが、小渕さんや金子さんらのように音楽家としての活動に支障を来すケースも少なくない。

 海外の報告によると、音楽家のジストニアを初めて発症する年齢は平均35.7歳、男女比は4.1:1で、音楽家の200人に1人に認められるという。脳の構造的変化が認められるほか、ピアニストでは脳にある運動野の手の領域で、弦楽奏者では感覚野の領域で変化が大きいことなどが指摘されている。

音大生の125人に1人が"疑い"

 小仲氏らは今回、音楽大学に在籍する1〜4年生580人(女性485人、男性72人、平均年齢19.5歳、右利き515人、左利き42人、両利き2人、有効回答率は97.9%)に対し、アンケート調査を実施。専攻楽器はピアノが最も多く(296人)、次いでバイオリン(108人)、声楽(39人)、フルート(29人)、チェロ(17人)、コントラバス(14人)、クラリネット(11人)、その他(66人)となっており、経験年数は11〜15年が最も多かった。演奏を始めた年齢は3歳と12歳にピークがあり、練習時間は4時間が最多、中には7時間以上練習する学生もいた。

 音楽家のジストニアについて「知っている」と回答したのは29%にとどまった。

 症状に関する質問からジストニアが疑われたのは5人(0.8%)。主な症状は、ピアノ専攻の2人が「右手小指が上を向いたままになる」「中指が曲がる」、金管楽器専攻の2人は「低音が出ない」「口が横にずれる」、木管楽器専攻の1人は「左手中指から小指が屈曲する」だった。

 症状が出始めたのは18〜19歳が多く、いずれも右利き、4人は女性だった。全員とも家族にこの病気にかかった人がおらず、症状が現れても医療機関を受診しなかった。

 小仲氏は、ジストニアへの認識の低さを踏まえ、診断されていない患者がいる可能性を指摘。学生や関係者へのこの病気に関する知識を周知するとともに、症状が現れたことでうまく演奏できなくなり、さらに練習を重ねて症状を増悪させないよう、注意を喚起した。

(編集部)

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